COLUMN コラム
最近、「AIを活用するとしたら、どうしたらいい?」と訊かれることが多くなってきた。
そこで、今回はAIについて私の考えをお伝えする。
結論は、日本企業にAI戦略は早すぎると言っても過言ではなく、むしろ優しいレベルであるということである。
目次
そもそもAIを使って何をしたいかすら分かっていない
AIを活用したいと相談される方に私は1つ質問している。
生成AIを業務遂行上でツールとして使用することなのか?
それとも、組織としてAI戦略を行っていきたいということなのか?
この質問にすらポカンとする方が多い。
違いがよく分かっていないのだ。
読者のあなたはいかがだろうか?
ちゃんと明確に答えることができるだろうか?
生成AIをうまく活用する手順
ちなみに、ポカンとされた瞬間、私は「ChatGPTをまず使用して慣れてから、他の生成AIに手を出す方がいいですよ」とアドバイスするようにしている。
そもそも回答できない時点で、AIをツールとして活用することを考えているが、自分の業務で使えるかどうか判断つかないという状態なのだ。
今まで何人も相談を受けてきたが、どれだけヒアリングしても結果ここに行きつくので、テンプレのようになってしまった。
では、なぜChatGPTか?
それは一番使いやすく、一番ノウハウが落ちており、探せばすぐにノウハウを教えてくれる勉強会に参加できるといった利便性の高さからである。
確かに生成AIは色々ある。
だが、最初からあれもこれもと手を伸ばしてしまうと、結局よく分からない状態になってしまって挫折する。
それならば最初は我慢して1つの生成AIに集中した方がよい。
ChatGPTすら使えないのに他の生成AIを使うことはできない。
まずは1つに慣れてから他のAIに手を出した方が時間を節約することができる。
AIブームにただ乗りたいだけの人が多い
先の質問で「AI戦略をやっていきたい」と回答した人の多くは、偏にAIブームに乗りたいだけの人が多すぎるほど多い。
もしくはAIに夢を見ているかだろう。
「何かよく分からないけど、AIを使ったらもっと楽になるに違いない」
「何かよく分からないけど、AIを使ったらよきに計らってくれるに違いない」
「何かよく分からないけど、AIを使ったら社員の雇用が不要になるに違いない」
1と3は効率化で何とかなるんだが、何故か効率化について興味がないようだ。
これは何を意味しているか?
AIというブームに乗っかりたい
もしくは
AIを使っていると自慢したい
という裏があるということだ。
もし効率的に業務を回したい、社員の採用をしたくない、コストを下げたいといった要望が強いのなら、効率化で叶う。
方法は何でもいいはずだ。
わざわざAIを活用するまでもない。
導入費用も安く導入までの期間も短い上に、効果も高い効率化の方が圧倒的に有効である。
たとえば、同じ目的地に行くのに10分で行ける方法と8時間かける方法があったら、どちらを選ぶだろうか?
絶対10分で行ける方法だろう。
だが、こうした人たちはなぜか10分で行ける方法に興味を示さない。
では、何に興味があるのか?
流行っているAIに興味があるので、目の前の解決策に興味がないのだ。
効率化はするつもりがないが、AIを使えば「なんかよく分からないけど、すごいことができるんでしょ?」と言ってくる。
これは、ただただブームに乗りたいだけなのだ。
「では、どんなことがしたいんですか?」って質問してみると、「そこを訊きたいんです」と返ってくる。
何がしたいのかが明確でないと答えが出せない。
AIはツールである。
ツールなので、ぶっちゃけ使わなくても全然問題ない。
何だったらAIなんか使うよりも人を雇って指示命令を出した方が楽ちんだ。
AIを使いたいなら、そもそも何に使うかを決める必要がある。
料理をしたいのに金槌を使うだろうか?
木を切るのにドライバーを使うだろうか?
パソコン操作をするのに、テレビのリモコンを使うだろうか?
目的に合った適切な道具を選ぶ必要がある。
それがたまたまAIだったなのなら、AIを活用すればよいのだ。
「特に何も用事はないけど、AIを使いたい」というのは、何も実現できないのだ。
たとえ目的があっても日本企業にAIは早い
これまで述べたように、多くの企業にとってAIを組織で活用するのは早すぎる。
そもそも目的意識がない時点でアウトである。
包丁を片手に街を闊歩したら、変身者である。
すぐに警察の世話になることは明らかだ。
私からしたら、こんな状態なのだ。
とにかく目的を持っていただきたい。
おっと、ここで話を終わるところであった。
キリがよくて、コラムを終えたい気持ちを抑えながら、本題に入ろう。
これまでは本題ではなく、前置きである。
AIをビジネスに使いたいと思っていて目的もある、といった場合でも日本企業にAIの活用は早いのだ。
というか、アメリカ企業ですらAI活用が十分にできる企業の数はほとんどないと言われているのに、日本企業にAI活用ができる企業があるとは到底思えない。
あったとしても大手くらいだ。
ここまで確信を持って伝えることができる理由がある。
AI戦略はそもそもデジタル技術を前提としている
1つ目の理由は、パソコンが苦手な人が多いのでAIを使えないことである。
そもそもであるが、AIはデジタル技術である。
「私、パソコン苦手なの」って言える人が多い我が国で、AIを活用できると思うか?
67か国でデジタルスキルが最下位の我が国が、今日からデジタルスキルがバッチリになる可能性はどのくらいあるだろうか?
企業が社員に投資する比率は世界規模で低く、従業員の自己投資をしている比率も世界規模で低い我が国において、どうやったらデジタルスキルの向上が見込まれるだろうか?
この最初のポイントでつまづいてしまう。
パソコンが使えないので、そもそもAIは使えなくて当然なのだ。
腕立て伏せが5回しかできない人が、逆立ち腕立て伏せを100回できるだろうか?
できるはずがない。
そもそも論なのだ。
IT化とDX化が完了していることが前提としている
2つ目の理由は、IT化もDX化もできていないことである。
正確に言うと、DX化が完了していないのにAI戦略を行うことはできない。
DX化の肝はビッグデータの活用である。
つまり、デジタル技術を活用し、データを保管し分析し活用することによって、顧客に選ばれる企業になる取り組みがDX化である。
このデータがAI戦略に必要不可欠なのだ。
だが、日本企業の多くはDXに興味がない。
それどころか、DXの手前にあるIT化すら興味がない。
DX化をするためにはIT化が必要不可欠である。
最低限のIT化すらできていないのが我が国である。
「FAXでの注文が1割残っているので、それを廃止するのはパソコン操作が分からない人が可哀想」という意味不明なことを言ってくる人が未だにいる(理解はできるが、それを言ってしまうとIT化ができない)。
このような感じなので、そもそもAIとかまだまだ早いんだが?という状態なのだ。
先の腕立て伏せに近いが、こういったIT関係の取り組みは前のものをしっかり終わっている必要がある。
ゲームと同じだ。
どんどんレベルアップしていかないと、進むことができない。
一足飛びで行こうとしたら、ゲームのシステムで行けないか強すぎる雑魚敵にボコボコされるかである。
AIを使いたいなら、まずIT化を推進すべきである。
そもそもAIに食わせるデータがちゃんと整っていることを前提としている
最後に問題になるのが、AIに食わせるデータである。
そのデータがちゃんと目的の趣旨に合ったデータであり、なおかつAIに食わせるべきデータであるかどうかが大事だ。
不要な情報を与えて育てても意味がない。
たとえば医者の代わりに診断できるAIを作ろうと考えたとする。
その時に医療の情報ではなくアニメの情報を与えたらどうなるか?
使い物にならないものになるのは火を見るよりも明らかである。
たとえば製造業においてもロボットは同じでも作る製品、作る環境、毎日の稼働時間、製造年月日などによってロボットに違いが発生する。
では、このロボットに対してメンテナンスを行うことを人間ではなくAIにやらせたいといった場合は、どのようなデータが必要だろうか?
ジャストアイデアだし製造業について明るくないので、ここからは適当に書くことを承知いただきたい。
まず、天気、気温、操作対象者、製造製品、稼働時間などを事細かくデータとして毎日保存する。
溜めて溜めて溜める。
メンテナンスが発生したタイミングに、メンテナンスが起きた日時、理由、対処方法、結果をデータに保存する。
これを何年も行う。
そうすることで規則性が出てくる。
規則性から人間の目でも分析したら、ある程度の予測できるレベルまでデータを蓄積する。
このデータをAIに食わせる。
こうすることでようやくAIが理解できるようになる。
ちなみに、データを取得する際に、感情を一切入れてはいけない。
「5年やったし、お金もあるし、節税対策でとりあえずメンテナンスしようぜ」
なんてことはしない。
ロジカルではない。
規則性がない。
利益が出ていなくても5年ごとに必ずメンテナンスをするのならいいが、そうでないなら絶対やってはいけない。
論理的に誰もが納得できる理由を説明できないなら、不要な雑音である。
「楽をしたい・自慢したい・ブームに乗りたい」経営者が多い
以上のように見ていくと、AIは日本企業に早すぎるのだ。
そもそもパソコン音痴集団で構成されていて、IT化すらできていなくて、データの蓄積も終わっていないのにAIを使えるはずがない。
このように伝えると、「サービスに含まれているAIを活用するつもりだ」と言ってくるわけだが、他の企業も同様に使っているAIでライバルに勝てるのか?と訊きたい。
たとえばセールスフォースもAIを機能として導入している。
それを使うのは全然いい。
だが、そのAIが本当に使用企業に最適かどうかは不透明であるし、ライバル企業も同じものを使っているのなら、どんぐりの背比べもいいところである。
既製品のAIは大して効果的ではない。
御社自身、御社のお客様、御社を取り巻く環境、御社のサービス、御社の強み、御社に在籍する社員などなどを加味していない。
御社にしかないデータがあるはずである。
既製品のAIを使用している企業ばかりのところに、自前のデータでお客様に向き合おうと挑戦する企業が現れた瞬間、その戦いの勝敗が決する。
勝利企業になるためには、自前のデータでお客様に向き合う企業になる必要があるのだ。
冒頭でも伝えた通りアメリカ企業でもほとんどAI活用ができない状態である。
日本企業はそもそもデジタルスキルもビッグデータの活用も世界最低水準である。
そんな企業がAI活用なんておこがましいのである。
AIがブームである。
そのブームに乗りたい気持ちは分かる。
乗ることができたら自慢もできよう。
PRできてドヤ顔もできよう。
だが、その前に地に足のついた対策が必要なのだ。
楽をしたい気持ちはすごく理解できる。
だが、基礎工事が終わっていないところに家を建てると、すぐに倒壊してしまう。
しっかりとした基盤を作ることこそが近道なのだ。
最後に
今回のコラムはどうだっただろうか。
AI活用について相談されることが増え、その度に同じ回答をしているので、この際に形になるものにしようと考えた。
そこで今回コラムとして残したわけだが、実は音声配信ではもっと早めに出してあるので、最新情報はそちらを見て欲しい(実はこのコラムは2か月遅れで世に出ている)。
今回は法人としてAIを活用するなら何が必要か?という点で伝えた。
コラムで書いた通り、そもそも経営層をはじめ日本人のデジタルスキルが不足している点、IT化すら完了していない点からAIの活用は難しい。
IT化が完了していてもDX化をしてデータを蓄積する必要がある。
たとえデータを蓄積しても、それが雑音だらけのゴミデータだと無意味だ。
ちゃんと有効なデータである必要があるのだ。
そして、そのデータは何年もかけて取得する必要がある。
その理由は規則性と正確性を得るためである。
データは多ければ多いほどよいのだ。
日本人10人にアンケートした結果が日本人全員の特徴であると言われたら、どう思うか?
そんなはずがないと思うだろう。
もし1億人だったら?
データの数は信頼できる根拠の1つである。
ただし、ゴミデータだと数があっても意味がないことは理解する必要がある。
という風に、かなり難しいのだ。
ちなみに、個人レベルでツールとして使う分には問題ない。
今後の世の中を考えると、90年代にパソコンが到来したのと同じく、2025年以降はAIを活用できることが世界的に求められる。
これからの時代を生き抜くためにもAI活用ができる人材になる必要があるのだ。
さて、今回のコラムが何か気づきや学びになれば幸いである。
最新情報はスタンドエフエムで投稿している。
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それではまた次回のコラムでお会いしましょう。