COLUMN コラム
今回は、75%の企業が内製化に取り組むというアンケート調査結果に対して、この結果は事実かどうかを見ていきたい。
これまで内製化について言及し、第1回目では内製化についてやそのメリットについて語り、第2回目では内製化の難易度と内製化の実現に期待されるサービスについて語った。
75%の企業が内製化に取り組んでいるのであれば、今頃日本はIT化やDX化の推進がかなり進んでいるはずである。
なのに、そんな気配がない。
私が営業をしている際に、IT化やDX化を理解していない人がいる。
先日、お客様にちゃんと言葉を伝えるセミナーに行ったことがあるが、「ITはお客さんにとってなじみがないので、別の言葉に置き換えてみよう」と言われた。
これくらい日本はヤバいのだ。
なのに、75%も内製化に取り組んでいるという。
どうにも信じられない。
この違和感の正体に迫ってみたい。
内製化が「人気」?そのからくりとは
では、早速、内製化が流行っている感を出していることについて見ていこう。
IDC Japanがまとめた調査報告を見てみると、この原因が分かる。
75%の企業が内製化に取り組む 上流工程の内製化を4割が志向
DXでITの内製化に取り組む企業の約6割は、上流工程など一部の内製化を志向~国内デジタルビジネス支援サービスの需要調査結果を発表~
これらの記事を拝読すると、どうにも上流工程の志向が強い。
だが、上流工程は本来「内製化」に含むべきではない。
上流工程とは、企画・設計・要件定義などのことを指す。
確かにエンジニア領域の業務であるため、この部分をエンジニアに任せるのではなく、自分たちでやっていきたいというのも「内製化」のように見えるかもしれない。
だが、この部分は「内製化」すべきではないし、含めるべきではないのだ。
こんなものを含めるから、「内製化に取り組んでいる」という回答を行う企業が75%も存在することになる。
上流工程を内製化に含むべきではない理由
では、なぜ上流工程に含むべきではないのか?
理由は簡単である。
上流工程だけをエンジニアから奪うとシステム開発に失敗するリスクが高くなるからである。
分かりやすいように、建築で考えてみよう。
建築にも上流工程がある。
企画があり、設計がある。
どういう家にするのか?
どういう間取りにするのか?
などを考える必要がある。
では、ここでクイズである。
建築について何も知らない人が、プロと同じように上流工程を実施できるだろうか?
答えは簡単である。
ノーだ。
100%無理だ。
絶対不可能だ。
これと同じである。
エンジニアでもない人間がエンジニアと同じレベルの上流工程を実施できるなんて夢物語である。
開発の内製化もセットでなければ無理である。
したがって、上流工程だけの内製化は失敗する未来しかなく、これを内製化と言うのは勘違いも甚だしいのだ。
一方で、エンジニアにすべて任せるべきか?というと、これもまた違う。
どういう業務をどういう風に改善したいのかをヒアリングすることなく、エンジニアはシステム開発を行うことはできない。
エスパーではない。
AIでも何も指示命令していないのに、急にアウトプットしたらどう思うか?
恐怖でしかない。
よって、上流工程自体はエンジニアの仕事範囲であるが、
- どういう業務を対象としたいのか
- その業務の内容は何か
- どのような流れで実施しているのか
- 例外的な動きはないのか
- どういう結果が欲しいのか
といったことをヒアリングしないといけない。
こうした情報をまとめるのは、依頼者側の責務であり義務である。
「とりあえず何でもいいからマイホームが欲しい」
という注文で最高のマイホームが手に入るだろうか?
絶対にない。
このリクエストをいかに落とし込むかが重要であり、これを「内製化」と言っているのであれば、世の中全部内製化と言っていいレベルである。
ちゃんちゃらおかしい。
まとめると
- 上流工程を素人がやると失敗リスクが急上昇する
- そもそもリクエスト部分は依頼者の義務であり責任である
という2点に集約できる。
この2つの理由から内製化に上流工程を含めるべきではないと考えるのだ。
もし上流工程を含めない場合、「取り組んでいる」と回答した割合は下がるだろう。
別調査では半数以上が内製化に無関心
さらに「デジタルの内製」とか意味不明な項目が入っているので、これも除外すれば更に減るだろう。
別の調査(DX動向2024)では、半数以上(58.2%)が内製化を進めていないと回答している。
従業員数100人以下の企業に注目すると、68.2%と向上し約7割の企業は内製化を進めていないことが分かる。
このように調査項目や企業規模によって大きく変動することは理解しておくべきである。
ちなみに、DX動向2024では日本企業もDXを頑張っているかのような報告をしている。
本調査では、半数以上の企業がDXを取り組んでいるとしている。
しかし、帝国データバンクの調査(企業のDXへの取り組みに関する動向調査)を見ると、かなり乖離がある。
日本企業の8割はDXに興味関心がない状態である。
あらゆる情報は絶対的に正しいという風に盲目的に信じてしまうよりも、「こういう視点があるんだ」という気持ちで見ておくのがよいだろう。
とはいえ、75%の企業が内製化に興味津々であるというのは言い過ぎであり、含めるべきではない項目まで含めてしまった結果の発露のように感じるのは、私だけではあるまい。
次回に続く
今回のコラムはどうだっただろうか。
「内製化って人気なんやで」っていうことの背景について語った。
調査報告によって結果が変わるし、対象者によっても変わる。
調査結果を鵜呑みにするのではなく、目の前のお客さん10人に話してみる方がリアルだ。
10人に話してみて、7人くらいが取り組んでいれば事実に近いだろう。
だが、私の周囲に確認したところ2人だった。
しかも、内製化に取り組んでいると答えたものの内容的にはただのIT化だったので、現実にはゼロ人だ。
このようなのがリアルである。
ニュースや調査報告は鵜呑みにするのではなく、参考程度に思っているのが丁度いい。
さて、今回のコラムが何か気づきや学びになれば幸いである。
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それではまた次回のコラムでお会いしましょう。