COLUMN コラム
最近、ある勉強会を開催した。
その内容は、「日本企業で働く従業員はパソコン操作が苦手である。だからこそ、まずはITリテラシーの向上こそがIT化の近道なのだ」というものだった。
質疑応答の際、ある社長から質問があった。
その質問とは、「ITリテラシーの向上は採用で何とかなるものだから、ITサービスの導入を検討しているが、どのようなサービスがトレンドなのか?」というものだ。
聴衆を見渡すと、頷く者がちらほらいた。
開いた口が塞がらないとは、まさにこのことである。
彼らは一体何を聞いていたのか?
10人規模の会社だとして、全員がアナログ業務に明け暮れている会社だったとしよう。
そんな会社にITリテラシーの高い人間が一人入ってきたとして、それでIT化が実現できると本気で思い込んでいること自体が痛々しい。
泣きそうになった。
このような社長たちには、いくつかの共通点が見られる。
今回のコラムでは、その共通点に触れながら、IT化を真に進めるにあたって実施すべきことについて、私の見解を述べよう。
ITかぶれのIT音痴
ITサービスやDXサービスを導入すれば、楽になると信じて疑わない者がいる。
最近のITトレンドを知りたいと、様々な勉強会やセミナーに足しげく通う者もいる。
そして、何の役にも立たないRPAやAIなどを導入し、得意げになっている者もいる。
こうした「ITかぶれ」は、変にITの知識をひけらかす。
自分は知識を持っているものだから、ITサービスを導入すれば全てが解決するとばかりに思い込んでいるのだ。
教育などせずとも、ITサービスという神が全てを解決してくれると信じ切っている。
私からITサービスなど不要だと進言しても耳を貸さない。
それどころか、私を変人扱いしてくる始末だ。
だが、600億円の売上を有するワークマンが、Excelだけで売上を3倍にし、データ経営を実現した事例があることを忘れてはならない。
中小企業の多くは、正直なところ、Excelやスプレッドシートの活用だけで十分な場合がほとんどなのだ。
この事実を頑なに拒み、多額の費用をかけてIT化したいのは、もはや誰かに自慢したいという見栄なのではないか。
IT化で本当に必要なもの
前提がそもそも間違っている。
ミシュラン三ツ星シェフが教えるプロになれる料理教室に通うとして、包丁を握ったことのない者が通って意味があるだろうか。
料理のトレンドを調査して意味があるだろうか。
和食、洋食、中華、アジアンなど、様々なジャンルを遍歴したとして、それ自体が時間の無駄ではないか。
包丁を持ったことがない者が試したとしても無意味であることは、誰もがすぐに理解できるはずだ。
まずは料理の基本から学ぶべきである。
この前提を頑なに認めようとしないのが、先ほど述べたITかぶれのIT音痴なのだ。
救いようがない。
ITサービスを導入して効果があるとしたら、それはデジタル技術を活用できる人材だけで組織が成り立っていることを前提とする。
レストランの調理場に包丁を使えないシェフがいるはずがないだろう。
パソコンを使うことが当たり前の職場で、パソコンの基本操作すらできないのが、今の日本なのだ。
伊達に世界最下位のパソコンスキルを有した国ではない。
南アフリカにすら勝てない国なのだ、日本は。
そんな国において、いくら高性能なITサービスを導入したとしても、それを使いこなせるはずがない。
だからこそ、人材投資を先に実施すべきなのだ。
海外では常識、日本では非常識
海外において、この取り組みは当たり前に実施されている。
特にアメリカでは、従業員を雇用する条件として、有すべき能力を明確に提示する。
現在でいえば、AIを活用して業務を行うことを条件にしている企業も、ちらほら出てきているだろう。
この条件に合致しない従業員は、いずれ解雇リストに記載されてしまうのだ。
もちろん、企業側も従業員に該当スキルを身につけさせるための教育を実施する。
教育した。
それでも習得できなかった。
だから、解雇になるのも仕方がない。
これが彼らのロジックである。
一方で、日本ではどうだろうか?
そもそも教育に対する意識が低すぎる。
全く教育をする意欲がないのだ。
解雇ができないという条件があるからという側面もあるが、諸外国と比べて圧倒的に教育意欲が企業側にない。
勝手に身につくとでも思っているのか?
それともITサービスを使えば、何もしなくても良きに計らってくれるとでも思っているのか?
AIを導入すれば、ドラえもんがやってきてくれるとでも考えているのか?
何とも嘆かわしい。
このような他責思考こそが、日本のITの遅れに繋がっているのではないだろうか。
成功するIT導入は「教育」を前提とする
ITが分からない。
パソコンが分からない。
コピー&ペーストはマウス操作だ。
ショートカットキー?何それ、美味しいの?
こんな状態でIT導入をしても、失敗は目に見えている。
当たり前のことである。
トレンドを追いかけて右往左往し、ああでもない、こうでもないと試しては止め、止めては試す。そんな現状は、まさに恥辱である。
ITツールは魔法ではない。
ましてや神でもない。
単なる道具だ。
最初から高性能な道具を所有しても、基本ができていなければ宝の持ち腐れである。
高性能な道具を買って使いこなそうと奮闘するよりも、まずは基本を理解することから着手すべきなのだ。
パソコン操作の基本すら知らないくせにITトレンドを追いかけ、ITサービスを導入したがるのは、まさに恥の上塗りであることを理解すべきである。
最後に
今回のコラムはどうだっただろうか。
読者の皆様にとって、今回のコラムが何か気づきや学びになれば幸いである。
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それでは、また次回のコラムでお会いしよう。