COLUMN コラム

2025.10.29
非効率の国、ニッポン? DXが機能しない根本原因

非効率の国、ニッポン? DXが機能しない根本原因

日本企業のDX不振、その根本原因は「効率化という麻薬」への依存です。コスト削減を目的とした場当たり的なIT導入は、真の効率化を阻害します。本稿では、DX推進における目的意識の重要性と、時間という宝物の活用法について解説し、日本企業の未来を照らします。

日本企業はアナログ業務ばかりで非効率だ。

これは、もはや常識と化した共通認識だろう。

いまだに紙の書類が山積みになり、ハンコ文化が色濃く残り、非効率な会議が延々と続く。

だからこそ、DX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されるべきだと、誰もが口を揃える。

そして、DXに期待することとして「業務の効率化」または「生産性の向上」が上位に挙がる。

 

確かに、非効率な現状を打破し、業務プロセスを最適化することは、企業にとって喫緊の課題である。

しかし、私はここに一つの警鐘を鳴らしたい。

それは、「効率化すれば全て解決する」という安易な期待が、実は非常に危険な「麻薬」のような危うさを秘めているということだ。

 

なぜ、これほどまでに「効率化」が叫ばれ、多額の投資が行われているにもかかわらず、多くの日本企業はIT化やDX化で目覚ましい成果を出せずに疲弊しているのか?

その根本的な原因は、彼らが「効率化という麻薬」の中毒に陥っているからに他ならない。

今回のコラムでは、その深淵に潜む根本原因に迫っていきたい。

効率化の落とし穴:コスト削減は「目的」ではない、ただの「結果」だ

日本企業がIT化やDX化で成果を挙げることができない、その悲しい現実。

そこには、明確な原因が存在する。

それこそ、「コスト削減」のみを目的とした効率化である。

 

「このシステムを導入すれば、〇〇の作業時間が半分になります!」
「DXで無駄をなくし、人件費を削減しましょう!」

 

こんな甘い言葉に乗せられて、多くの企業がITツールを導入し、業務フローを見直してきた。

確かに、目の前の数字だけを見れば、一時的にコストが減ったように見えるかもしれない。

しかし、その先に何が待っていたか?

結局、本質的な課題は解決されず、別の非効率が生まれたり、社員のモチベーションが低下したり、あるいはシステムを導入したのに使いこなせず、かえって手間が増えるという「本末転倒」な事態に陥っていないだろうか?

 

私は断言する。

コスト削減は、本来「真の効率化」によって後からついてくる「結果論」でしかない。

決して、効率化の「目的」であってはならないのだ。

にもかかわらず、多くの企業はコスト削減を目的に掲げ、上辺だけの効率化、数字合わせのIT導入に走ってしまう。

これでは、企業が疲弊するのも当然だ。

 

なぜ効率的に行動する必要があるのか?

この問いに対する深い理解が、多くの日本企業には欠けているように思う。

この本質的な目的意識の欠如こそが、DX失敗の根源なのだ。

目先のコスト削減ばかりに目を奪われ、その行動の先に何を見据えているのかを問わない。

これでは、いくらITツールを導入しても、いくら業務フローを改善しても、成果があるはずがないのだ。

 

「浮いた時間」という名の宝物:人件費削減は短絡的な「悪手」だ

では、真の効率化とは何か?

それは、「時間」という名の「宝物」を生み出すことである。

 

たとえば、我々に業務効率化をご依頼いただく企業では、劇的な変化を体験されることがある。

これまで10時間かかっていた業務が、わずか10分になった事例もある。

こういった事例をはじめ、業務時間を実に9割も削減できるのだ。

これは決して夢物語ではない。

現実に起こり得る、IT化・DX化の真のインパクトである。

 

では、この「空いた時間」という名の宝物を、あなたは一体何に使うだろうか?

 

ここで多くの企業が陥りがちなのが、「空いた時間=人件費削減」という短絡的な思考である。

 

「業務が9割減ったなら、その分、人員を減らそう」

「残業がなくなったから、その分の残業代をカットしよう」

 

これらは、経営者として最も安易で、そして最も愚かな「悪手」であると、私は強く批判したい。

 

なぜなら、これは従業員のこれまでの貢献を完全に無視している行為だからだ。

彼らが長年培ってきたスキルやノウハウ、企業への忠誠心を、単なる「人件費」という数字でしか見ていない証拠である。

そのような考え方では、社員の心は離れていく。

会社のために効率化に協力した結果、自分の首が絞まるとなれば、誰が次も協力したいと思うだろうか?

社員のモチベーションは地の底まで落ち込み、最悪の場合、優秀な人材から順番に会社を去っていく。

結局、残った社員に業務が集中し、新たな非効率が生まれるという、本末転倒な結果を招くことになるのだ。

 

真の効率化がもたらす「空いた時間」は、人件費を削減するためのものではない。

それは、新たな価値創造のために投資すべき「宝物」なのだ。

 

「何のため」にやるのか?目的意識こそが全てだ

日本企業がIT化やDX化で成果を挙げることができない、その最大の原因は、まさしくこの「何のためにやるのか?」という目的意識と、それに基づく「ゴール設計」の欠如にある。

 

DX化の指標さえ持たない企業が、あまりにも多いという現状。

これは、単にDXの問題ではない。

私は、日本経済がここまで落ち込んだ根本原因は、この「目的意識やゴール設計がないままに経営してきたこと」にあるのではないか? とすら感じている。

 

「とりあえず導入しよう」

「他社がやっているからウチもやろう」

「効率化すればコストが減るから、それが目的だ」

 

このような安易な発想で「何でもやればいい」という行動が、いかに企業を消耗させ、成長の機会を奪ってきたことか。

真の効率化とは、単に業務を早く終わらせることではない。

 

「空いた時間で、顧客に対してどんな新しい価値を提供できるのか?」

「浮いたリソースを、社員の成長や新たな事業開発にどう繋げるのか?」

「効率化によって生まれた余力で、会社の未来をどうデザインするのか?」

 

この「何のためにやるのか?」という目的意識こそが、効率化の成否を分ける全てなのだ。

あなたの行動が、一体どういう結果を得たいのか?

そのゴールをちゃんと考えることから全てを始めるべきである。

この目的意識が明確であれば、たとえツールが古くても、人が少なくても、驚くほどの成果を出すことができる。

逆に、この目的意識がなければ、どんなに素晴らしいITツールを導入しても、どんなに多額の投資をしても、企業は「効率化という麻薬」の中毒症状に苦しみ続け、いつしか自滅の道を辿ることになるだろう。

 

今こそ、その甘い麻薬から抜け出す時だ。そして、「何のためにやるのか」という本質的な問いを、自社の経営に深く刻み込む時なのだ。

最後に

今回のコラムはどうだっただろうか。

読者の皆様にとって、今回のコラムが何か気づきや学びになれば幸いである。

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それでは、また次回のコラムでお会いしよう。

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