COLUMN コラム
2000年ごろから生産性の向上を目的として、IT化が話題になっている。
世界中を見渡すと、IT化を推進したことにより生産性が向上し、ビジネス上の優位性を獲得した企業が多い。
2000年以前と以後で、多くの国がデジタル技術の導入によって、飛躍的な成長を遂げてきた事実は紛れもない。
しかし、我が国・日本においては悲しい現実がある。
世界の常識である「IT化をすれば生産性が向上する」という公式が、日本においては通用しないのだ。
生産性が全く向上しないどころか、時には逆に低下することすらある「逆転現象」が我が国に起きている。
この異常事態は、一体何が原因なのか?
今回のコラムでは、この日本特有の「逆転現象」の背景にある根本的な3つの元凶を徹底的に解剖する。
日本企業が今、直面する危機の本質に迫っていきたい。
第一の元凶:「致命的なパソコンスキル」と学習意欲の欠如
IT化で生産性が下がる最大の原因の一つは、日本におけるパソコンスキルの致命的な低さにある。
IMD(国際経営開発研究所)の調査報告が示す通り、日本はデジタルスキル保有国において世界最下位という不名誉な結果を叩き出している。
67か国中67位。
日本よりも下だと思う国を挙げてみて欲しい。
その多くが日本よりもパソコンが使えるだろう。
モンゴル?バーレーン?トルコ?ブラジル?アフリカ?
素晴らしい。
全部日本より上だ。
それくらい日本人はパソコンを使うことができない。
では、果たして、そんな国でいくらITサービスを導入したところで、その真価を引き出すことができるだろうか?
答えは否だ。
どれほど優れたITツールを導入しても、それを使いこなす社員のスキルが伴わなければ、宝の持ち腐れとなる。
それどころか、新たなツールに習熟するための混乱や、旧来の業務との非効率な併用が発生し、結果として全体の生産性を低下させることも少なくない。
なぜこのような事態に陥るのか。
日本における従業員の学習意欲の低さもまた、深く関係している。
企業はIT投資をしても、満足にITサービスを使うことができず、生産性が低下することが多い。
よって人材投資をしようと思うが、学習意欲の低い人たちにいくら教えても全く無意味である。
そのため、形だけの研修が多くなり、「やった感」を出そうと躍起になる。
そんなことでは、効果的なIT化を推進することなんて夢のまた夢である。
これは、日本の企業文化に根差した深刻な問題だ。
第二の元凶:「特殊業務」という言い訳が招く悪循環
日本企業に蔓延する「私たちの業務は特殊過ぎてITに合わせることができない」という言い訳もまた、生産性低下の大きな元凶だ。
メディアはよくこうした言い訳とその対策を報じているので、あなたも一度は見聞きしたことがあるかもしれない。
日本にいると、さも「仕方のないこと」のように感じる。
しかし、この言い訳は単なる「思考停止」に過ぎない。
だから、アナログで仕方ない。
そう言い訳ができてしまう。
だが、世界を見渡してみれば、1980年代の働き方をしている企業は世界に少ない。
ガラパゴス日本。
なんと不名誉なことか。
とはいえ、資金的に余力のある企業はシステム開発に乗り出すことがある。
だが、この思考停止が生み出すのは、既存の業務フローに合わせた「独自開発システム」への過剰な投資につながる。
その結果、開発費用は高騰し、完成したシステムの保守運用費だけで、他の新たなIT投資が全くできなくなるという悪循環が発生している。
世界中の企業は、ITテクノロジーの進化に合わせて自社の業務フローを柔軟に変化させ、最適化することで、競争優位性を確保している。
彼らはITを「業務を合理化し、新たな価値を生み出すための道具」と捉え、必要であれば業務の進め方そのものを変えることを厭わない。
世界にできて、日本にできないという理由はどこにも存在しない。
この「特殊業務」という言い訳は、ただ単に変化を嫌い、現状維持に安住したいという怠惰の裏返しに過ぎないことを、経営者は理解する必要がある。
第三の元凶:世界から周回遅れの「IT投資額」
日本企業のIT投資額が世界的に見て低すぎるという事実も、生産性低下の決定的な要因である。
2019年の総務省が出したレポートによると、1995年の日本のIT投資額を100とした時、2017年現在の日本企業のIT投資額は100を少し下回る。
一方で、アメリカは300程度を指し示している。
第二の元凶でも挙げた言い訳を何とかするための独自開発をすることによって、多くの「運用保守費用」が発生する。
その費用をねん出するために、新しいIT投資に挑戦することができない。
そのため、企業の生産性向上に効果的な一手を打つことができない。
また、効果的なIT投資を行うためには、アナログな組織からデジタルな組織への変革を同時に行う必要がある。
だが、経営者の多くはアナログ人間のため、ただITサービスを導入しただけで終わってしまう。
その結果として、IT投資に効果を実感することができない。
効果を実感できなければ、投資に対してネガティブな印象を持ってしまう。
そのネガティブな印象がIT投資を鈍らせている。
多くの企業がIT投資の必要性を認識しながらも、安易なIT化や場当たり的なシステム導入のツケが回ってきているとも言えるだろう。
世界はAIやクラウド、ビッグデータといった最先端技術への投資を加速させ、新たなビジネスモデルを次々と生み出している。
それに対し、日本は古いシステムの延命に終始し、文字通り「周回遅れ」の状態だ。
このままでは、国際競争力はさらに低下し、企業の存続そのものが危ぶまれる事態となる。
日本よ、「井の中の蛙」から覚醒せよ
これらの三重苦が、IT化が生産性を下げるという日本の逆転現象を生み出しているのだ。
日本はなぜか、未だに「日本人が優秀である」という幻想に浸りがちだ。
それはまさに「井の中の蛙」である。
かつて日本が世界をリードしていた時期は確かにあった。
しかし、それは過去の栄光に過ぎない。
今や「失われた30年」という長い停滞期を経て、世界的に見て、後進国と同じ水準の国と評価されてもおかしくない状況に陥っている。
この現実に、今こそ真剣に目を向けるべきである。
呑気に構えている時間など、もはやどこにも残されていない。
日本企業が生き残る道は、ただ一つ。
人材への本質的な投資を行い、組織のあり方を根本から変革させ、ITを真に活用して世界経済という荒波に打って出る時が来ているのだ。
最後に
今回のコラムで、何か気づきや学びはあっただろうか。
日本が直面するIT化の現実と、その根本原因を理解し、行動を変えるきっかけとなれば幸いである。
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それでは、また次回のコラムでお会いしよう。