COLUMN コラム

2025.12.03
「パソコン苦手」は自己紹介ではなく犯罪予告

「パソコン苦手」は自己紹介ではなく犯罪予告

「パソコンが苦手です」という言葉は、現代社会における業務上の危険宣言です。ITリテラシーの欠如がもたらすリスクと、変化する社会で生き残るための対策をご紹介します。

私は家庭の事情で兵庫に戻ったのだが、東京と違って出会いがない。

一時期はお客様とどう接点を持てばいいのか、途方に暮れてしまった。

だから、オンライン・リアル問わず交流会に参加することが多くなったのだが、そうしていると、「私、パソコン苦手なんですよね」という言葉をよく耳にする。

さらに質が悪いのは、それに対して悪びれた様子や恥ずかしい様子がない。

本人にとってはちょっとした自己紹介かもしれないし、謙遜のつもりかもしれない。

だが、私にはそれが「業務上の危険人物宣言」に聞こえて仕方がないのだ。

「私は文字の読み書きもできません」と言っているのと同じことを臆面もなく堂々と宣言しているのと同じだからだ。

あえて脅迫めいたことを言うとしたら、こういった宣言はある種の「犯罪予告」に近いレベルのインパクトである。

もちろん、誰もがエンジニアやデザイナーといった職種の人のようなレベルである必要はない。

だが、今の時代においてパソコンを使うということは、「読み書きそろばん」と同じレベルで必須である。

現代社会のリテラシーと言えよう。

そこで、今回のコラムでは、3つの観点でお伝えしよう。

  1. ITリテラシーが低いことの危険性
  2. 今後の社会の見通し
  3. 実際にITリテラシーを強化するための対策

ITリテラシーが低いことは、あらゆる損害を生む

「読み書きができない」と同じと知れ

江戸時代、寺子屋で子どもたちは読み書きを習った。

世界的に日本の識字率は驚異的だったが、この教養の証は今や当たり前である。

「私は読み書きが得意です」と自己紹介されても何も魅力的に思わないだろう。

昔はこれだけでも立派な資格だったが、今や備えていて当たり前の能力である。

これと同じなのがITリテラシーであり、「パソコンが苦手」と言えてしまうのは「読み書きができません」と自己紹介をしているのと同じなのだ。

つまり、現代における「読み書き」が「ITリテラシー」のことになる。

 

たとえばコピー&ペーストをどうやっているだろうか?

ショートカットを知っている人は簡単だろう。

しかし、マウスの右クリックでメニューを出して操作する人が一定数いるのだ。

すべてのショートカットを覚える必要はないし、高度な技術を求めているわけではない。

業務における必要最低限のスキル・ノウハウを所有しておくべきだ。

コピペもままならず、ファイルも散乱した状態では「仕事ができる」とは言い難い。

職場に潜む「リスク」

そんな状態の人を雇用していくと、企業にとって大きな問題につながっていく。

たとえばExcelの操作ができない、ショートカットキーが分からない、ITツールの操作がおぼつかない、フォルダ名が「新しいフォルダ(5)」みたいになっている、などなど。

そんなことある?

と思うかもしれない。

しかし、実際にあるのだから笑えない。

こうした状態は企業にとってリスクだ。

同じ業務でも1時間で済むはずが5時間も6時間もかけてやっている現状を、果たして正常と言えるだろうか?

明らかに異常であるが、その異常な状態を異常であると判断するには、正常な状態を知っていないといけない。

だが、思い出して欲しい。

パソコンが苦手な人だかりだと、正常な状態がどんな状態かを表現することができないのだ。

となると、いつまでも異常な状態であることに気づけないまま不要なコストばかり支払うことになる。

「苦手」は免罪符にならない

こういった状態なのに、なぜか日本社会ではまるで免罪符のように使うことができる。

「文系だからパソコンが使えないのは仕方ない」

「今までパソコンと無縁の生活だったから仕方ない」

といった言葉が何となく許される空気がある。

日本社会は隣を見て安心する人が多い。

「私の他にもパソコンが苦手な人が多いから、大丈夫」と思うんだろう。

だが、こういったことが許されるのは子ども時代のみだ。

社会に出た以上は、仕事ができるかどうかの世界である。

「パソコンが苦手」は通用しない。

苦手なら最低限使えるようになるまで学ぶべきだ。

仕事を何だと思っているんだ?

しかも、大きな技術革新が今起きている。

急速な進化によってインターネット到来以来の大きな変化が起きようとしている。

そんな中で、苦手だからしなくてもよい、という発想は自らの首を絞めるのと同じであるのだ。

これからの社会を生き抜くために

先にも伝えたが、今がどんな世界かを知っておくべきだ。

日本人は生成AIを知っている層と知らない層で分けることができ、知っている層においても使っている層と使っていない層に分けることができる。

そして、残念な話だが、使っていない層の方が多い。

だが、これはある意味、仕方のないことだと思う。

というのも、生成AIは効率化サービスではない。

クリエイティブな業務をサポートする圧倒的なITツールである。

その結果として効率がUPするということがあるが、多くの人はクリエイティブ業務に携わっているわけではない。

この状態で生成AIを活用して生活する人は少ないのは、仕方ないのだ。

 

とはいっても、今後の社会において生成AIを活用した業務運用は必ず来る。

来ることが分かっているものに対して対策を取らないのは愚策である。

アメリカでは2Dデザイナーが一斉解雇された。

他にも生成AIによって効率化できた分、解雇する事例が起きている。

日本はまだまだこの波が来ないだろう。

だが、いつかは来る。

その時にみなさんは解雇宣告が自分に来るのをヨシとするだろうか?

「パソコンが苦手」と言っていると、その未来は近い将来やってくるかもしれないのだ。

成長がある日々が充実感を与える

苦手=成長停止宣言

「私はパソコンが苦手です」という発言を聞くと、私には「これ以上成長するつもりはありません」と言っているようにしか聞こえないのだ。

苦手であると言ってしまうと、人は苦手なことを回避しようとする。

苦手なのだから当たり前だ。

そうすると、成長が止まる。

すぐに「苦手」と言ってしまうのは、自らの成長を止めてしまう最大の要因である。

 

時代は常に動いている。

どんなに願ってもパソコンのない時代に戻らない。

95年からパソコン時代が到来して早30年である。

インターネットのない生活に戻ることなんて難しい。

日常業務においてもパソコンを使わない職種は少ない。

使う頻度が低い業種もあるだろうが、ITに関係のない業種はほとんどないだろう。

したがって、ITと無縁の生活を送っている人は少ないはずだ。

そんな状態において、なぜ苦手と言えてしまうのか。

苦手で片付けてしまうのは大きな問題になるのだ。

 

少し視点を変えてみよう。

成長を拒む人材が一人いるだけで、組織全体の進化は大きく遅れてしまう。

特に中小企業では一人ひとりの役割と責任が重い。

そのため、その影響は甚大である。

新しい業務ツールを導入しても、「よく分かりません」「使えないので使いません」という態度を取ると、全社的な変革がとん挫してしまう。

その人、一人のせいで組織の成長が鈍化する。

それが「パソコンが苦手」の最たる悪影響である。

組織と言うのは、最も弱い部分が全体の限界を決める。

パソコンが苦手な社員が、組織全体の成長の足かせになるという現実をもっと真剣に受け止めるべきだ。

そして、「パソコンが苦手」と言えている人は自らが「足手まとい」であることをもっと理解し、恥じるべきである。

解決策は「適応」すること

では、恥じるだけでよいのか?というと、そんなはずがない。

恥じた後は行動である。

もちろん、苦手を克服することは容易ではない。

安心して欲しい。

プロのように使えるようになれと言うつもりはない。

パソコン業務に慣れることは可能だ。

だから、たった1つのことを意識して欲しい。

それは、疑問を持つ、ということだ。

  • もっと簡単にできるかもしれない
  • 他の方法があるかもしれない

といった視点で毎日を過ごしていただきたい。

こういった視点で物事を見ることによって、解決しようと人の脳は動き始める。

今では依然と比べて学習のハードルは格段に下がっている。

YouTubeを活用することで、Officeソフトをはじめ様々なITサービスの操作方法を学習することも可能だ。

AIに「この操作の手順を教えて」と尋ねれば教えてくれる。

本当に便利な世の中になった。

さらに、Copilotのような支援ツールもあるので、生成AIとタッグを組んで業務を簡単にすることも可能だ。

それでも「苦手だからやらない」というのは、もはや人としての在り方を放棄しているのと同義である。

人は「考える葦」である。

考えて行動することが我々を人たらしめている事実を忘れてはいけない。

ITリテラシーは、「業務の安全保障」

さて、これまで個人に焦点を当ててきた。

企業に焦点をあててコラムを終えていきたい。

 

企業にとってITリテラシーはもはや「安全保障」と同じレベルである。

一人でもデジタル音痴がいることで、業務運用レベルが著しく低下する。

さらにセキュリティリスクも跳ね上がる。

「パソコンが苦手」という言葉を聞いたら、それは今すぐ対策を打つべき問題であると認識してもいいくらいだ。

もし採用しようとしている人が口にしたら、即座に不採用だ。

それくらいのインパクトなのだ。

これからの社会においてITリテラシーは必要不可欠なものになる。

ITサービスの利用が日常化していく中で、いつまでも「苦手」で居続けることは確実に「加害者」になり得るのだ。

そんな「加害者」を組織が雇用し続けるのはリスクでしかないことを再認識すべきである。

最後に

今回のコラムはどうだっただろうか。

世界最高の識字率を誇った日本が、今や世界最低基準のITリテラシー率である事実は何とも皮肉だなと思う。

日本はいつから教育にコストをかけなくなったのだろうか?

教育なき国に発展はない。

実際に全社員にExcel活用を徹底し、業務改善を実現したワークマンの事例がある。

彼らは特別な才能やスキルがあったわけではないし、外から専門の人間を採用したわけではない。

マウスの右クリック操作でコピペをしていた社員も多かった。

それなのに、社内の人材を徹底的に育成することでITを使いこなす文化を根付かせたのだ。

その成果として、売上が過去最高を叩き出した。

教育の力は何よりも強い。

日本に資源がないと言われるが、世界人口TOP10の我が国における最高の資源は「人材」である。

今こそ人材投資を行うべきであると思うのは私だけではあるまい。

 

さて、今回のコラムが何か気づきや学びになれば幸いである。

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それではまた次回のコラムでお会いしましょう。

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