COLUMN コラム
時間の大切さを痛感し、それを全ての働く人々へ還元したい。
そう考える加門和幸社長に、経営者としての想いと価値観について語っていただきました。失敗から学び、常に前を向いて進む言葉には、経営者としての覚悟と未来への展望が込められています。
業務時間を減らす事業で叶えたいこと
――御社が提供している業務効率化サービスに込めた想いを教えてください。
従業員の働く時間を解放し、コア業務に集中できる環境を作ることで、一人一人がやりがいのある仕事に挑戦できる社会を目指しています。
会社の業務は、主業務と副業務の2つに分けられます。これらはコア業務、サブ業務とも呼ばれ、簡単に言えばお金になる業務とお金にならない業務です。
副業務は重要であり省くことができないにもかかわらず、大変で時間のかかるものばかりです。そのため、コア業務に集中できない企業様も多くいます。
そして、人材不足に苦しみ、パワーゲームと化した採用活動に注力せざるを得ないのが現状です。
我々は、この現状を変えたいと考えています。
もし副業務にかかる時間が今より8割も削減できれば、より自由に主業務に集中できるようになります。そうすれば会社は成長し、従業員も楽しく充実した毎日を過ごせるのではないでしょうか。
業務の無駄を省くことは、単なる効率化ではありません。
みんなの時間はお金であり、命なんです。
楽デジは、そんな命を大切にするために生まれました。
――単なる効率化以上の意味があるということですね。
はい。面倒で大変な業務に追われていると、社員のやる気も低下してしまいます。
そうなると、新たな業務を任されたくないあまり、意図的に作業時間を引き延ばそうとする人も出てきます。
今の仕事でさえしんどくて辛いのに、そんな仕事がもっと増えるなんて絶対嫌じゃないですか?
だから、忙しいフリをする人も多くいると思います。
これは人生を無駄にしているようなものです。一度失った時間は、二度と取り戻せません。
だからこそ私たちは、業務の無駄を省くことが、人の命を大切にすることに直結していると考えているのです。
また、このような状態を作り出していること自体、経営者の責任でもあると思います。
・仕事は楽しくない
・仕事はつまらない
・仕事は辛い
そんな常識を持ってしまうと、自分の子どもに胸を張って「大人はいいものだよ」と言えません。
まずは自分自身が「大人になってよかった」と実感できる環境を作ることが重要です。
そのような環境づくりこそが、経営者の責任ではないでしょうか。
時間という命の重さ
――「時間は命である」というお考えの背景には、どのような経験があるのでしょうか?
時間は最も贅沢なものだと考えています。お金は失ってもまた稼げば戻ってきますし、信頼も一度失っても築き直せることもある。
でも、時間だけは違います。一度失ったら、二度と取り戻せません。
今この瞬間にも時間は失い続けています。
もし時間を取り戻すことができるなら、資金のある人はどれだけのお金を積んでも惜しくないと考えるでしょう。
それくらい時間とは貴重であり、何物にも代えがたいものなのです。
実は私の人生には、生と死がずっと寄り添っていたんです。
私が生まれる少し前に、母方の祖父が亡くなりました。
私の誕生を心待ちにしていたそうですが、誕生前から生死が共にある形で生まれたんです。
それに、私って元々生まれる予定になかった子どもなんです。
長女と12歳も離れていて、かなり年の差があります。
実は次女を失っているんです。
そのため、父が寂しいからと望んで生まれた子どもなんですよ。
そんな父も、今では認知症です。
あんなに強かった父が……と思うこともあります。
少し話が暗くなりましたね。
ちょっと明るい話をすると、過去に何度か犬を飼ったことがあります。
柴犬を飼っていた時は、気づかないうちに妊娠していて、そのお産を両親と私の3人で手伝ったこともありました。
田舎で生まれ育ったため、大自然の中にある生死に囲まれて成長したという自覚が強いですね。
――その経験が、現在の考え方に反映されているのですね。
そうですね。特に不登校を経験した時期にも、「生きる」ということを深く考える時間がありました。
何もしない時間の中で、
- 生と死について
- 時間の意味について
- 宗教について
- 神について
- 宇宙について
- 自分と他者について
など本当に色んなことを考え続けていたんです。
哲学者って暇人なのかもしれませんね。
また、エンジニアとしての経験も大きいです。エンジニアって本当に怠け者なんですよ。
でも、それは単なる怠惰ではありません。
「いかに時間をかけずに最適な結果を出すか」ということを常に考えています。
指1本でも余計に動かしたくない。
それは自分の時間を大切にしているからなんです。
――その考え方は、他の事業にも活かされているのですか?
はい、そうです。
命を大事にするために、業務フロー管理システムも開発しようとしています。
このシステムを使えば、仕事が割り振られただけで誰に何かを確認することもなく業務を遂行できるようになります。
このようなシステムを作りたい理由は、業務上の「言った・言わない」問題や詳細を再確認する時間が無駄だと感じたからです。
例えば、業務説明のために「これを見ておいて」と資料を渡しても、後から質問を受けるケースがありますよね。それは、何か情報が不足しているからです。
そして質問に答えるためには、その質問の背景にある“不足情報”が何かを確認する時間も必要になります。
このように「私、説明しなかったっけ?」「それってどこに書いてある内容?」といったやり取りは、お互いの時間を無駄にしていると思うんです。
だからこそ、この時間の無駄を極力なくしたいと思っています。
従業員の時間、つまり命を無駄にしない仕組みを作って、日本中の働く人をハッピーにすること。それが私たちの使命だと考えています。
失敗から学ぶ勇気
――経営者として、これまでどのような経験を積まれてきましたか?
今の私を形作っているのは、まさにこれまでの数え切れないほどの失敗です。
成功したことって、あったかな? と思うくらいに。
特に人材採用については、本当に大きな失敗をしました。
――具体的にはどのような失敗だったのですか?
採用活動ですね(笑)
もちろん、今いる社員はみんないい人で、本当に感謝しています。
とはいえ、採用活動自体は失敗の連続で……。中小企業が300万円の予算で、大手企業の1600万円規模の採用活動と戦おうとしていたんです。会社の影響力や知名度が全くない状態では、どうしても限界がありました。
まずは会社の基盤を固め、知名度を上げることが先決だと気づき、今は採用活動を一時的にストップしています。
この経験から、事業の優先順位付けの重要性を学びました。
これは本当に大きな気づきでしたね。
メンターの存在
――そういった失敗から、学びを得られる秘訣は何でしょうか?
メンターの存在が大きいですね。メンターってよくない風に使われることもありますが、アドバイザーとか師匠とか先輩とか、そういった存在です。
壁にぶつかるたびに相談して、アドバイスをいただいています。
これは失敗をしたからこそ、得られる学びです。
10個のアドバイスをもらっても、一度に全部はできません。
もちろん、できる人もいます。
羨ましいと思いますが、私は不器用だし馬鹿なので、できない。
だったら、1個でもいいから確実にやり遂げる。
時間はかかっても、1個ずつ終わらせていけば、最終的には全て達成できる。
そう考えて、1つずつやっていくことに挑戦しています。
――メンターからの学びを、素直に受け入れられるのはなぜですか?
成功してない人間が「いや、それは違います」なんて言えないじゃないですか(笑)。
できないことは山ほどありますが、アドバイスの中から自分にできることを見つけて、それを着実に実行していく。それが重要だと考えています。
人との出会いが織りなす成長
――これまでのキャリアを振り返って、最大の成功は何だったとお考えですか?
私の中で一番大きな成功は、人との出会いですね。
これだけは誰にも負けないというか、一番自慢できることです。
ある特定の1人との出会いというわけではなく、今まで出会ってきた多くの人々との関わりすべてが、私の財産なんです。
――具体的にどのような出会いがありましたか?
本当に様々ですね。
両親から始まり、今までずっと多くの貴重な方々と出会っています。
何気ない出会いも、私にとっては貴重な出会いです。
大切なのは、そのことに気づいているかどうか、だと思います。
運がないと感じている人は、この大切な出会いの価値に気づけていないからではないかと思うのです。
――それらの出会いから、どのような学びがありましたか?
学校のように体系的に教わったわけではなくて、本当にいろんな人に影響を受けています。ある人がさらっと言った言葉を「あ、そうなんだ」と思って、勝手に重く受け止めただけだったりする。
でも、そういう一つ一つの出会いが積み重なって、今の私があるんです。
――一瞬の出会いでも、全て吸収されてきたのですね。
これが10年前の私だったら、こんな話はできていなかったと思います。
もしかしたら、昨年の私でもできていないかもしれない。
それだけ、人との出会いによって成長させていただいているんです。
自分の人生を自分でコントロールするためには、人との出会いを大切にすることが重要です。
最近「親ガチャ」って言葉をよく耳にします。
確かに「親ガチャ」と言わざるを得ない方もいますが、多くの場合、他責思考でしかないと思うんです。
親の立場からしたら「子ガチャ」だよって思いませんか?
何様のつもりだと言いたくなります。
本当に経験の浅い子どもの言いそうなことだなって呆れてしまいます。
確かに親は選べません。
でも、人との出会いは自分である程度コントロールできます。
学校が全てではありませんし、周りの友達や大人が全てではありません。
日本でも1億人以上の人がいるし、世界に目を向けると80億人もいる。
たった数十人しかいない世界が、世界の全てではないんです。
たとえば孫正義氏に会いたいと思ったら、どうしますか?
一番簡単な方法は、ソフトバンクの株主になることです。
次は、ソフトバンクがやっている人材教育施設に入ること。
DMを送り付けるのもいいですよね。
このように方法はいくらでもあるんです。
会いたいと思えば、方法はあります。
成長したい、自分の人生をコントロールしたい、と思うなら、自分よりも上のステージにいる人がいる場所に行けばいい。
そういった刺激のある環境に身を置くことは怖いですが、その分学びがあり成長があるんです。
私は劣等生だったし、不登校でした。
劣等生でも死にはしません。
不登校になったからといって、死にはしません。
落ちこぼれようが会社をクビになろうが、何になろうが死にはしません。
死なない限り、何歳になってもやり直すことができる。
日本では再挑戦をすることが難しいですが、それでも再挑戦を繰り返した人が最終的に勝利をつかんでいます。
凡人には凡人の戦い方があります。
一歩一歩遅くても、前進することが大事です。
時間は命です。
この命を大事にするのも無駄にするのも自分次第です。
そう思いながら、毎日前進できるよう挑戦してます。
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失敗を恐れず、むしろそこから学びを得る。
人との出会いを何よりの財産とし、常に学び続ける。
そして何より、一瞬一瞬の時間を「命」として大切にする。
その姿勢は、自社サービス「楽デジ」を通じて、多くの企業の業務効率化、ひいては人々の「時間」と「命」を大切にすることへとつながっているのですね。