我が国はロボット大国だ。スイスのIMDという調査機関が発表したレポートによると、67カ国中世界2位という偉業を達成している。
しかし、そんな我が国は同時に世界最大のアナログ大国なのだ。
今回は、ロボット大国日本がなぜアナログ大国なのか、その深層に迫っていきたい。
世界をリードするロボット技術、その実力
我が国は世界有数のロボット技術を誇る。
スイスのIMDで世界第2位と評価されるほど、そのロボット産業は強力だ。
その技術力は他国の追随を許さないほど高い。
例えば、自動車産業では精密で無駄のない生産体制が組まれ、医療分野においても人口減少に備え、手術支援ロボットなどの開発が進んでいる。
ロボットは今後の社会にとって必要不可欠なインフラとも言える。
インフラ整備に強みを持つ日本だからこそ、ロボット産業は今後も強化されていくだろう。
国内に根強く残るアナログ文化が足を引っ張る
しかし、いざ企業の実態を見てみると、そこにロボットの恩恵は一切感じられない。
驚異的なアナログ文化が今も多くの企業に根付いているのだ。
多くの企業が紙で書類を作成し、ファイリングしている。
FAXや電話での注文も日常茶飯事だ。
少しデジタル化を進めようとすると、「お客様でパソコンを使えない方がいるから可哀想」という声が上がる始末。
利便性や効率性を放棄している現状こそ、見過ごすべきではない問題と言えるだろう。
こうした遅れは企業だけに留まらない。
国ですら2020年代にもなってフロッピーディスクを使っていたのは記憶に新しい。
これは、決して一部の年代に限った問題ではない。
「今までこれでやってきたから」という慣習や「変化に対する抵抗感」、さらには「デジタル技術に対する苦手意識」が、変革を阻む大きな壁となっているのだ。
日本で暮らしていると、往々にして世界標準を見失いがちになる。
それは、日本が単独で経済が成り立つという特殊な状態だからこそ、世界への視点がついつい忘れられがちだからだ。
意識的に情報収集をしていかないと、日本という狭い経済圏の中でしか通用しない非常識が常識と化してしまう危険性がある。
そこで、今回はロボットに特化して世界がどうなっているのかを見ていこう。
海外におけるロボット活用の最前線
ロボットの活用シーンの中でも、最も比較しやすいのが港湾のロボット活用事例だ。
ここでは、中国・シンガポールにある世界最大級のコンテナ港を事例として挙げてみたい。
中国・上海の洋山深水港事例
上海市の東南部に位置する世界最大級のコンテナ港として知られる洋山深水港。
シンガポールのトゥアス港と比較されるほど、コンテナ港として有名だ。
この港では、無人のクレーンや自動搬送車(AGV)が24時間体制で稼働している。
人の手を介さずに効率的で安全に荷役作業を実行できる環境を構築し、人的ミスや事故のリスクを最大限低下させている。
効率化の「神話」をつくる上海の「AI無人港」という2019年に書かれた記事をご紹介しよう。
こちらが簡潔にまとまっていて読みやすかった。
シンガポールのトゥアス港事例
ライバル港として挙げられるのが、シンガポールのトゥアス港だ。
この港もまた徹底したロボット技術の活用により完全自動化を果たしている。
洋山深水港と同じく無人クレーンや自動搬送車による24時間体制を構築している。
他にもイベント駆動型アーキテクチャを導入することによって、リアルタイムで様々な情報を共有し、効率的なリソース配分や迅速な意思決定を可能にするなど、理想的な環境を構築している。
こちらは日経の記事をご紹介しよう。
シンガポール、世界最大の「次世代港」へ AIで管理もという記事が分かりやすかった。
世界の港湾に共通する「自動化を前提としたインフラ整備」
これら海外の事例から、ロボット技術だけではなく、周辺を取り巻くIT技術を高いレベルで活用していることが共通している。
ざっと調べただけでも、以下の3つの点で共通項が見られる。
- 自動搬送車(AGV)による24時間体制の構築
- 自動クレーンによる効率的な荷役作業
- 5G通信とAIの徹底的な活用
このような港では、人が介入する必要のない高度な自動化が実現されているのだ。
こうした取り組みを見ると、「自動化を前提としたインフラ整備」が世界のトレンドであることは明白だ。
我が国の現状は悲惨、この矛盾を許してよいのか
一方で我が国はというと、未だに手作業・人力である。
一生懸命汗水たらしてピッキングする。
そんな働き方を2025年にもなって続けている。
「人手が足りない」と言っている経営者は多いが、その実態は「人手」を無駄に使っているのが我が国なのだ。
我が国で製造されているロボットを、我が国自身が使っていない。
このような矛盾が許されてよいだろうか。
いつまで「アナログ大国」でいるつもりか?
我が国は「ロボット大国」と言われている。
世界の産業用ロボットの約6割が日本製と言われるほど、その技術力は高く評価されている。
しかし、それを我が国は使いこなせていない。
この皮肉に気づかなくてはならない。
これまで我が国の産業で最強だったものは数多くある。
その代表的なものと言えば自動車だろう。
昔は日本にどの国も勝てないと言われていたが、今では見る影もない。
ノートパソコンも世界No.1だった。
アニメや漫画も世界No.1の座が揺るがされつつある。
アニメのエンドロールを見ると、韓国や中国の方の名前や企業名が記載されることは少なくない。
ゲームにおいてはより顕著で、今や韓国や中国メーカーの勢いを止めることができないでいる。
話を戻そう。
ロボット技術はまだ世界トップクラスを維持しているかもしれない。
だが、いつまでそれが続くだろうか?
スイスのIMDの調査で2位と評価されているとはいえ、これはトップから転落していることを意味する。
このまま順位を維持できるだろうか?
「日本の製品ってすごいけど、日本人って自分たちの作った製品を使えないよね」――このような厳しい現状を逆転させていかなければ、日本の未来はない。
私たちは今、この矛盾と真剣に向き合い、変革への一歩を踏み出すべきではないだろうか。
最後に
今回のコラムはどうだっただろうか。
今回のコラムが何か気づきや学びになれば幸いである。
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それではまた次回のコラムでお会いしましょう。