COLUMN コラム
効率化と聞くと、どんなことを想像しますか?
多くの人は単に業務の手順を改善したり、時間を短縮したりすることをイメージするかもしれません。
しかし、株式会社皆人が提供する「楽デジ」は、単なる業務効率化を超えて「人間らしい生活を取り戻すためのサービス」を目指しています。
「パパを救え」と名付けられた印象的な事例を始め、効率化が単なるビジネス上の成果ではなく、人々の生活の質を根本から変えられるという想いについて、株式会社皆人の加門社長にお話を伺いました。
「パパを救え」から始まる効率化の真髄
―「パパを救え」という記事を拝見し、効率化が単に業務改善だけでなく、人の生活を豊かにすることに感銘を受けました。
ありがとうございます。あの事例は、私も特に印象深いですね。
コールセンター業務の効率化を依頼された際、担当者が「3歳の娘とお風呂に入りたい」と打ち明けてくれたんです。深夜まで働き、家に帰るのはいつも家族が寝た後。ディズニーランドも「俺抜きで行った」と悲しそうに話していました。
でも、私たちの効率化によって、彼は定時に帰れるようになり、娘さんとお風呂に入る時間や、家族との食事を取り戻せたんです。このような生活の質の変化こそが私たちの仕事の本当の価値だと思っています。
―効率化の先にある、生活の質まで考えるようになったきっかけは何ですか?
正直、それは経営者になったからだと思います。10年以上会社を経営していますが、本当に「経営」というものを考えるようになったのはここ最近なんです。それまでは、エンジニアとして頑張っていました。
でも、エンジニアの視点から経営者の視点へと広がったことで、技術の先にある人間の幸せに目が向くようになったんです。効率化することで何が実現できるのか、どんな生活の質向上につながるのか、そういったことを考えるようになりました。
効率化の理念を社員と共有する方法
―そのような効率化への考え方を社員とはどのように共有されていますか?
月1回の全体会議やカフェタイム、不定期の1on1ミーティングなどを通じて共有しています。また、ミッションやビジョンを明確に伝えることも大切にしていますね。
お客様が持たれている「こういう効率化によって、こういう未来を実現したい」という思いも、社員には話しているんです。
社員全員が完全に同じ考えを持っているとは言えませんが、少なくとも「社長はこういう考えを持っている」ということは伝わっていると思います。将来的には全員が同じ方向を向いて進んでいけるようになればいいですね。
社長から見た社員の存在
―社長にとって社員はどのような存在ですか?
よく「社員は家族」と言う経営者がいますが、私は「仲間」だと思っています。同じ船に乗って同じ目的地を目指す仲間です。
もしかしたら、途中下車する人もいるかもしれない。
でも、また何年後かに一緒に仕事ができたら面白いなと思っています。
—社員に期待することは何ですか?
社員に期待することは二つあります。
一つ目はお客様からの評価ですね。
「〇〇さんがいてくれたおかげでこうなった」「ありがとう」と言ってもらえるかどうか。
プロとして、感謝される仕事をしなければいけないと思っています。
そしてもう一つは、心身ともに健康であること。
お客様の期待に応えようとして、体を壊したら本末転倒です。体を壊すくらいなら、お客様から感謝される前に自分を大事にしてあげなきゃ。
もちろん、1ヶ月や2ヶ月、長くても3ヶ月くらい無理することはあるかもしれません。でも、その後はちゃんと体を整えてほしい。
本当に、燃え尽き症候群ってあるんですよ。一生懸命やって、「ようやく終わった」と思った瞬間に0になるんじゃなくてマイナスになってしまいます。心がそうなってしまうとプロとしての活動ができなくなるんです。
―健康を特に重視されている理由は?
私自身、不登校を経験して心の病を抱えていました。どれだけ元気でも心がへこたれると、体にまで影響が出るんです。それで、2年半も棒に振ってしまいました。
実際、体がちゃんと問題なく動くようになったのって、20歳過ぎてからなんですよ。10年くらいは体調が優れなくて、顔色もすっごく悪かった。だから写真も嫌いでした(笑)。
また、姉が9歳で亡くなっていることも影響していますね。
姉は本当に頭が良かったんですよ。体が弱くて学校に行けなかったんですが、すごく勉強してテストで毎回1位を取るような子でした。ピアノも1回教えたら大体弾けるぐらい多才だったんですけど、幼くして亡くなってしまって……。
死んだら、そこで終わっちゃうんですよね。
どんなに大きな未来があろうが、期待されていようが、死んだ瞬間に終わるんです。
彼女は、スマートフォンが世の中に出ることも知りません。
そういうことを考えれば考えるほど、命を大事にしなければいけない、という気持ちが強くなりました。
だからこそ、社員には無理をしてほしくないんです。一時的に頑張ることはあっても、長期的に心身を壊すような働き方は絶対に避けてほしい。上司の役割は、そういった社員の健康を守ることでもあると考えています。
健全な働き方を実現する「楽デジ」の理念
―そのような考え方が、効率化を目指すサービスの根幹にも表れているんですね。
はい、まさにその通りです。
健全に働くためには効率化が必要で、私たちが提供する「楽デジ」は、そういった健全な働き方を実現するためのサービスなんです。
残業は絶対悪だと考えています。残業でなんとかできる時代は終わりました。
生活の質を犠牲にしながら無理をして働くのではなく、効率化によって定時で帰れる環境、心身ともに健康で働ける環境を作ることが重要なんです。
たまに「今この瞬間を乗り切ろう!」とチームで頑張ることはあります。終わった時に全員でハイタッチして「やったぞ!」という瞬間は、何物にも代えがたい。でも、それを日常にしては絶対にいけません。
健康で、お客様から「ありがとう」と言ってもらえる。この二つがあれば十分じゃないですか? そのために効率化があるんです。
効率化は目的ではなく、人間らしく生きるための手段だと考えています。
これからの歩み
―これからの方向性についてお聞かせください。
会社としての成長はもちろんですが、その過程で社員への投資も重視したいと考えています。
高級オフィスで仕事をしたからと言って、社員の生産性は上がらないでしょう?(笑)。
それよりも、褒められ認められる環境や学べる環境を作り、モチベーションや生産性を上げる施策にお金を使うべきだと思っているんです。
これからのエンジニアには幅広いスキルが求められます。技術だけでなく、コミュニケーション能力やビジネス感覚も必要です。多様なスキルを身につけられる環境を整えたいですね。
そして、最終的には、私たちが効率化の理念を体現する中小企業のモデルケースになることを目指しています。「健全に働くためには、効率化が必要」という考え方を、私たちの会社で実証して、世の中に広めたい。
お金や時間の制約はありますが、一つずつ課題をクリアして理想に近づいていきたいですね。
編集後記
現代社会では「効率化」という言葉が時に冷たい響きを持ちますが、株式会社皆人が描く効率化の姿は、むしろ温かく、人の幸せを中心に考えられたものです。このインタビューを通して、技術の発展が最終的に目指すべきは「人間らしい幸せな生活」であるという本質を、改めて痛感させられました。