COLUMN コラム
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「効率化のパラドックス」と「効率厨」の正体
先日、私は「効率化の罠」について警鐘を鳴らした。
あのコラムを読んで、ハッとした方もいるかもしれない。
しかし、中には「言ってることは分かるけど、結局ウチは効率化しないと回らない」と、どこか他人事に感じている方もいるのではないか?
厳しい話をしよう。
なぜ、皆さんが血のにじむような努力をして効率化を進め、最新のITツールを導入しても、結局「やればやるほど疲弊し、非効率になる」という逆説的な事態、すなわちパラドックスに陥るのか?
その根本に、「効率厨」という名の「病」が深く蝕んでいるからに他ならない。
コストダウンだけを金科玉条とし、目先の数字に囚われて本質を見失ってしまうことこそが、あなたの会社の成長を阻み、日本経済を低迷させている真犯人だと、私は断言する。
もしかしたら、あなたも、あなたの会社も、この「効率厨」になってはいないだろうか?
今回のコラムでは、この「効率厨」の思考回路がいかに危険か、そしてそこからどう抜け出し、真の成長を手にするべきか、徹底的に解剖していく。
日本企業を蝕む「効率厨」の病巣~数字に踊る盲目~
多くの日本企業がDXで成果を出せない現実。
それは、「効率厨」という名の病が、深部にまで蝕んでいるからだ。
「この業務を自動化すれば、残業代が〇〇万円浮く!」
「このツールを入れれば、人員を〇〇人削減できる!」
こんな言葉に、あなたの心は躍ってはいないだろうか?
日本のIT業界を見てみると、こういった言葉がすぐに聞こえてくる。
だが、数字遊びの効率化に躍起になるあまり、彼らは最も大切なことを見落としている。
コスト削減は、真の効率化によって後から付いてくる「結果」でしかない、という厳然たる事実を見落としがちである。
悲しいことにこの事実を誰も伝えないがために、日本のIT化やDX化が遅れてしまっているのだ。
そして、この病が日本全体に広がっていることを示す、痛ましいデータがある。
IPA(情報処理推進機構)が2025年6月26日に発表したプレスリリースでも、その悲しい現実が浮き彫りになっている。
彼らの調査によれば、日本企業のDX推進において最も重視されている効果は「コスト削減」が圧倒的多数であり、顧客価値向上や新規事業創出といった攻めのDXは、未だ二の足を踏んでいるのが現状なのだ。
日本企業が行っているのは、DXではないと断言できる。
コストダウンはIT化の領域だからだ。
とはいえ、IT化で得られる効果はコストダウンだけではなく、それもまた副次的に発生する要素に過ぎない。
にもかかわらず日本企業は「コスト削減」が圧倒的多数を占めているのは、非常に危険な状況なのだ。
経営者として、目先のコストに飛びつくのは、短絡的であり、ある種の「思考停止」とすら言える。
なぜ、効率的に行動する必要があるのか?という、最も根源的な問いから逃げ、分かりやすい数字に逃げているだけではないか?
結果として、表面的な効率化は、社員のモチベーションを削ぎ、業務プロセスを分断し、最終的には組織全体の「非効率」を生み出すという、皮肉な結末を招く。
そして、コストは削減できたとしても、肝心の企業としての価値は向上していない。
売上は上がってコストを下げているのに、なぜか利益が増えていないという奇妙な現象が起こっている企業も少なくない。
これは、見えないところで別の非効率なコストが発生している証拠であり、「効率厨」が引き起こす隠れた病理なのだ。
生み出された「余白」が持つ真の価値と「効率厨」の愚行
では、我々が提供するような、10時間かかっていた業務がわずか10分になる、劇的な効率化が実現したとき、あなたはそこで生まれた「余白」を何に使うか?
それは、紛れもない「時間」という名の、計り知れない「余白」、すなわち「宝物」だ。
この「宝物」を前にして、「効率厨」は何を考えるか?
残念ながら、彼らの頭の中にあるのは一つだけ。
「よし、この浮いた時間で、次はどうやって人員を減らそうか」。
人件費削減という、最も安易で、そして最も愚かな道に突き進むのだ。
考えてみてほしい。
社員は、会社のために尽力し、業務改善に協力した結果、自分の仕事が奪われ、仲間がリストラされる光景を目の当たりにする。
彼らの心は深く傷つき、会社への信頼は完全に失われるだろう。
これまで積み上げてきた貢献を、冷徹な数字で切り捨てるような行為は、もはや経営ではない。
組織の根幹を腐らせる「癌」である。
そして、IPAの調査では、コスト削減を重視する一方で、製品サービスの提供にかかる日数の削減には、日本のDXは効果を上げていないと指摘されている。
これは何を意味するのか?
まさに「効率厨」が、時間という宝物を手に入れたにもかかわらず、顧客への価値提供という視点が欠如している証拠だ。
彼らは、せっかく空いた時間を、顧客を待たせる原因となっているプロセス改善や、新たなサービス開発に使うことをしない。
結果として、コストは削減できたとしても、企業としての顧客への提供価値は全く向上せず、売上は上がっても利益が横ばいという、絶望的な状況を招いているのだ。
このようなコストダウン意識は、企業の成長を全く促さず、結果的に顧客を放置する、全く無意味な活動に他ならない。
真の効率化が創造するのは、人件費削減などという矮小な目標ではない。
それは、顧客への新たな価値創造、社員のスキルアップ、未来への投資という、計り知れない可能性を秘めた「未来の時間」なのだ。
この「空白」の真の価値を理解できない「効率厨」が選ぶ愚かな選択が、結果的に自らを滅びへと導くのである。
効率厨からの脱却:未来を創造する「目的意識とゴール設計」
DXの指標すら持たず、目的意識やゴール設計が欠如している日本企業の現状。
これは、個々の企業の小さな問題ではない。
私は、この「効率厨」が蔓延する経営こそが、日本経済をここまで落ち込ませた、真の病巣であると確信している。
「とりあえず導入しよう」
「他社がやっているからウチもやろう」
こんな安易な思考は、まさに「効率厨」の典型だ。
彼らは、目の前の数字だけを追いかけ、その行動が本当に企業に何をもたらすのか、顧客にどんな価値を届けるのか、社員の未来をどう変えるのか、といった本質的な問いを置き去りにしている。
結果として、企業は疲弊するばかりで、真の成長機会を自ら手放しているのだ。
今、問うべきは、「あなたは何のために効率化を行うのか?」
この一点に尽きる。
空いた時間を何に使うのか?
その先に、どんな顧客の笑顔、社員の成長、そして企業の未来を描いているのか?
この目的意識が明確でなければ、どんなに素晴らしいITツールを導入しても、どんなに多額の投資をしても、企業は「効率厨」の罠にはまり込み、疲弊し続け、いつしか自滅の道を辿ることになるだろう。
真の効率化とは、業務を早く終わらせることではない。
それは、生まれた時間とリソースを、より創造的で、より価値の高い活動に振り向け、企業と社員の「未来を再設計」することなのだ。
この「効率厨」という名の病から脱却し、真の目的を見据える勇気を持つこと。
それこそが、あなたの会社がこの厳しい時代を生き抜き、日本経済を再建する、唯一無二の道であると私は信じている。
最後に:あなたの中の「効率厨」を今すぐ根絶せよ
今回のコラムはどうだっただろうか。
読者の皆様にとって、今回のコラムが何か気づきや学びになれば幸いである。
目的なき効率化は全てを破壊する。
コスト削減は結果でしかない。
この真理を腹の底から理解し、あなたの中の「効率厨」を今すぐ根絶せよ。
単なる効率化の追求ではなく、真の価値創造と成長を志し、その先に広がる未来を掴むこと。
それが、今、経営者に求められる、唯一の「覚悟」である。
さて、最新情報はスタンドエフエムで投稿している。
IT関連の話題を別角度から見てみたい
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といった方は是非スタンドエフエムを覗いて欲しい。
それでは、また次回のコラムでお会いしよう。