COLUMN コラム

2025.12.10
基幹システムの刷新をDXと勘違いしている

基幹システムの刷新をDXと勘違いしている

刷新=DXと錯覚されがちな日本企業の現状に警鐘を鳴らし、IT後進国から脱却するために守りのIT化と攻めのDXを区別し、真の変革へ導く要点を解説する。

多くの日本企業が「2025年の崖」という言葉に惑わされている。

基幹システムの刷新をDXと勘違いさせられているのが現状だ。

その結果、多くの企業が基幹システムの刷新を行った。

だが、基幹システムを新しくしたことがそのままDXになったのかといえば、それは大きな疑問符が付く。

安易に考えるべきではない。

DXは想像以上に難しく、容易なことではない。

システムを刷新しただけであれば、それは単なるシステム開発に過ぎない。

DXとは全く関係がないのだ。

もし刷新が即ちDXであるならば、世界中でDXの成功例しか聞かれないはずである。

にもかかわらずDXの失敗例ばかり見聞きするのは、刷新即ちDXという公式が成り立たないことを示している。

 

では、日本がなぜDXで後れを取っているのか?

それは、刷新だけすればDXと勘違いしている企業が多いからだ。

そこで今回は、基幹システムの刷新がDXとは無関係であることについて、深く掘り下げていきたい。

なぜ基幹システムの刷新がDXと誤解されるか

DXという文脈において、そもそも基幹システムの刷新は必要不可欠か?という問いに対しては、「否」と答えよう。

必ずしも必要ではないのだ。

レガシーシステムであろうとDXは可能だ。

ワークマンがExcel1つでDXを実現した事例が全てを物語っている。

基幹システムが開発環境より10年近く経過していようが、業務が最適化されており、適宜アップデートを実行できているならば、無理に刷新をする必要はない。

老朽化=悪ではないのだ。

とはいえ、企業の安定した活動のためにシステムのアップデートを行っていく必要がある。

WEBシステムの世界では、5年に1度くらいはメジャーアップデートをした方がいいだろう。

基幹システムはWEBではないため、10年に1度の頻度でメジャーアップデートをしたいところだ。

これを刷新と呼ぶ。

使用されている言語やデータベースの更新と保守開発で散らかっているゴミの整理などを適切に実行しつつ、最新の業務内容や業務フローの見直しを行って業務の最適化を実行したり時代背景に合わせて機能の拡張をしたりするなどして、アップデートを実行していく。

こういった派手ではないが、必要不可欠な更新を適切に行えていない企業の方が多いのも事実である。

だからこそ、基幹システムの刷新を行った方がよいとする意見には私も賛同する。

しかし、その目的はあくまでもシステムや業務のアップデートに過ぎない。

これらはDXではない。

あえて言葉にするなら、「守りのIT化」と呼べるだろう。

身近な例でいえば、保険の見直しと似ている。

こんなことでDXができるならば、DXコンサルタントなる職業は不要である。

IT化はそもそも「守り」の属性が強い。

一方でDX化は「攻め」の属性が強いのだ。

日本以外の国々では、守りの対策を完備しており、だからこそ攻めのフェーズに移行できた。

一方で日本では、守りの対策自体が全くできていないのが実情である。

そんな状態で、攻めのDXなどできるだろうか?

できるはずがない。

だが、日本はできると信じているし、専門家も口やかましくDX、DXと騒ぎ立てる。

ここに日本企業が守りと攻めを混同している様子が如実に見て取れる。

この背景には、IT投資の遅れや成功体験の欠如があることは否めない。

IT投資をしてこなかったためにIT後進国になった日本

1995年以降、ITは急速に普及した。

しかし、我が国はITに対して後れを取り続けているのが現状だ。

未だにコピー&ペーストのショートカットを知らない人がいることが、その何よりの証明であろう。

アナログ業務が横行し、情報は個人所有に留まる。

IT化すれば10分で終わる業務を、延々と何日もかけてしまう、といったことも珍しくない。

このような状態で、ITとDXの違いをしっかり把握し、順序立てて実行できるはずがないのだ。

そもそもDXとは何か?

それは、デジタル技術を活用してビジネスモデルや組織、企業文化を変革し、競争優位性を確立させる取り組みのことである。

アナログ業務が横行し、パソコンの基本操作すら覚束ない状態では、デジタル技術を活用することさえ難しい。

そもそもの前提条件すら満たせていないのが日本社会なのだ。

そんな状態で、果たしてシステムの刷新ごときでDXなど出来上がるだろうか。

思い上がりも甚だしい。

だが、このような状態を招いたのは、他ならぬ我々IT企業である。

国が「2025年の崖」と声高に叫んだのを、我々はいいように利用した。

そのキャッチーな宣伝文句にメディアも乗っかり、結果として被害者が大量に誕生したのだ。

今一度、私たち日本人はIT後進国に住まう住人であるということを理解すべきである。

日本企業が生き残るために

基幹システムを刷新しただけでDXをしたと自慢げに語る社長がいる。

だが、それは単なる錯覚である。

DXとは到底かけ離れた、システム開発に過ぎない。

このような状態を放置すればするほど、海外企業との格差は広がる一方だ。

今までは日本人口が多く、日本経済という市場だけで戦うことができた。

しかし、それももうじき終焉を迎えるだろう。

その時、私たちのライバルは世界となる。

ライバルはすでにIT化を終え、DXを推進している。

AI時代が到来し、AIの活用も進めていくに違いない。

そうした時代にあって、私たちは何をしなければならないだろうか?

それこそ「守りのIT化」なのだ。

というと、ITサービスやDXサービスを導入すればよいと思っている人が多い。

そこで、一つだけやってみてほしいことがある。

それは、パソコンの基本操作を学習することである。

そんな馬鹿な、と思うかもしれない。

だが、日本はまずそこから始めなければならない。

包丁を握ることから始め、切り方を学ぶ。

そこから始めなければ、みじん切りもできないのだ。

「千里の道も一歩より」

「急がば回れ」

何事も基本が大事である。

最後に

今回のコラムはどうだっただろうか。

今回のコラムが何か気づきや学びになれば幸いである。

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それでは、また次回のコラムでお会いしよう。

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