企業にとって情報とは単なるデータの集まりではない。

ありとあらゆる情報は、企業にとって「武器」であり「未来を作る源泉」でもある。

つまり、情報とは資産なのだ。

しかし、日本企業を見渡してみると、この資産が非常にいい加減な扱いを受けている。

たとえば個人所有PCの中に閉じ込められており共有されていない状況であったり、紙として管理してファイリングされていて探すのも一苦労である状況であったりする。

管理しているつもりだろう。

確かに管理はしている。

だが、資産として管理しているのかどうかという視点で見た時、全く管理できていないことになる。

たとえば

• ITサービスを使っています
• ペーパーレス化しました
• DX化に取り組んでいます
• AI活用に努めています

と自慢げに言っている企業がある。

だが、その実態として情報の資産化ができておらず、従業員は日々情報を探すことに追われ、まるで「迷子」の状態になっている。

IT化の本質は、「情報の資産化」にある。

そこで、今回は情報の資産化こそIT化の真価であるということ伝えていきたい。

情報が迷子になる企業は、成長できない

そもそもだが、企業にはあらゆる情報が存在している。

たとえば

• 顧客情報
• 対応履歴
• 契約内容
• 業務フロー
• トラブル対応履歴
• 会議の議事録
• 社員のナレッジ

などなどすべてが財産である。

だが、こういった資産が多くの中小企業ではどのように扱われているか。

• 担当者の頭の中にある
• 担当者のパソコンの中にある
• 紙の書類棚の中にある

といった状況になっていることも少なくない。

パソコンや書類棚の中にしっかりとあるならまだマシだが、「頭の中にあります」といった状況になっている場合も少なくない。

退職されたら終わるやん、と恐怖するのだが、なぜかそういった企業の社長に危機感がない。

何故だろうか？

私は怖くて仕方ない。

 

話が逸れたが、これらを活用していない状況では、情報を適切に扱うことができない。

たとえば

• 必要な時に情報を思い出せない
• 必要な時にどこに情報があるか思い出せない
• 誰に聞けばいいのか分からない
• 過去の知見が活かせず、同じミスを繰り返す

といったことが発生することがある。

具体的なストーリーで説明すると

よく分からないから、「担当者が不在なので折り返します」と答える。

で、担当者は退職しているので折り返せない。

でも、折り返さないといけないから折り返して、情報ゼロから再スタートする羽目になる。

その結果、顧客を失うことになった。

といったことが起きることもあるだろう。

これでは組織が前進し続けることなんて無理だ。

情報そのものに価値はない

情報は本来価値を持たない。

情報が価値を持つのは活用した時だけだ。

たとえば提供している麻婆豆腐の辛みが足りないと答えた客が６０％いる、という情報があったとする。

この情報自体に価値はない。

ただの事実だし、「ふーん」で終わる。

では、いつ価値を持つか。

それは、このデータから読み取れる内容を元に商品開発をした時だ。

４割は満足しているかもしれないので、６割の人を対象にした新商品を開発する。

もしくは注文システムを変えてオーダー時に辛さを変更できるようにする。

もしくはテーブルに調味料を置いて自由に辛さを調整できるようにする。

このように１つの情報から選択肢を出して、顧客により良い価値を提供できるように動く時に情報は価値を持つ。

 

昔「トリビアの泉」という番組があった。

あの番組で紹介された情報を「へぇ」で終わらせたか、その情報を元に何かビジネスに繋げたかで、同じ情報なのに価値が違う。

これが情報に価値がないということである。

情報の資産化とは、共有し活用できる状態を作ること

しかし、活用できる状況に置いていなければ情報の活用は一切できない。

だからこそ、活用できる状況を作らないといけないのだ。

その状況を作ることを、情報の資産化と言う。

つまり情報を資産にするということは

• 必要な情報が
• 必要なタイミングで
• 必要な人に届く

といった状態を作るということである。

 

では、このような状態を作るのは一体どうしたらいいのか？

それこそがIT化である。

IT化を行うことで情報を社内に流通する仕組みを整えることができる。

これによって

• 業務の引継ぎがスムーズになる
• 担当者不在でも判断できるようになる
• 顧客対応の品質が向上する
• 社員教育における難易度を低下させることができる
• ナレッジを蓄積してミスを共有することができる

など会社全体の生産性や品質を根本から改善してくれるのだ。

 

たとえば業務の引継ぎを例にして考えてみよう。

業務内容や流れの棚卸をして教育するだろう。

資料を渡すだろう。

さて、資産化していなくて個人の頭とパソコンの中に情報が蓄積されているとしよう。

確かに個人所有のスキルの引継ぎは難しいだろうが、情報の引継ぎは可能だ。

だが、個人に帰属している場合、抜け漏れが発生する。

絶対発生する。

ここは断言しよう。

では、解決難易度はどれくらいだろうか？

時間の経過とともにその解決難易度は上がっていく。

１年後にはほぼ不可能に近いだろう。

これが情報の資産化で解決できるのだ。

情報資産があってこそ、DX化もAI戦略も動き出す

IT関連の話題はどうしても派手な方向性に行きがちだ。

しかし、こうした地味なところにこそ本来的な価値がある。

AIだのなんだの言っているが、そこよりも土台である効率化や情報の資産化にもっと着目すべきである。

そもそもAI戦略はDX化を前提としている。

DX化が終わっていない企業にAI戦略は不可能だ（AIツールの活用だけなら別だが、AI戦略について詳しく知りたい方は、「御社にAI戦略は早すぎる」を読んでみて欲しい）。

そして、肝心のDX化はIT化とデジタル技術を扱うスキル、そして情報を必要としている。

IT化しただけでは足らず、情報の資産化を行えているかどうかがポイントなのだ。

つまり、DXもAIもそもそも情報が資産化されていなければ動き出すことができないのだ。

情報が紙に埋もれている状態であったり、属人的に管理されている状態であったりする企業に、DXもAIも無理である。

最新トレンドの前にやるべきことがある

情報を資産化してようやく効果を発揮することをよく理解しておく必要がある。

派手なAIやDXに飛びつきたい気持ちも分かる。

ITの最新トレンドに飛びつきたい気持ちも分かる。

だが、そもそも土台ができていない人に何も実現することはできないのだ。

サッカーボールを蹴ったこともないのに、プロのサッカー選手になると息巻いている小学生のようなものだ（私の小学校時代だ）。

 

今一度、原点に立ち返り、自社の状況から何が必要で、どう対応していくべきかを検討していただきたい。

最後に

今回のコラムはどうだっただろうか。

結論としては、これからの時代において「情報をいかに管理し、いかに活用するか」が経営におけるポイントとなる。

私たち日本企業は旧態依然とした働き方をしていることは周知の事実である。

紙や口頭、属人的な管理状態をよしとしてきた。

しかし、この状態から脱却し、すべての情報を会社の資産であると認識して、対策を講じる企業こそ成長企業の条件と言えるだろう。

あまり情報の資産化がIT化の真髄であるという話を聞かないので、コラムとして配信してみた。

IT化は生産性の向上やペーパーレスといった側面ばかり注目されるし、IT業界全体で見るとAIがホットである。

派手でもあるAIに注目したい気持ちは分からなくもないが、今一度情報を迷子にしない取り組みをしてみてはいかがだろうか？

ちなみに、音声ではだいぶ前に配信している内容なので、最新情報を知りたい方は音声配信を聞いてみて欲しい。

 

さて、今回のコラムが何か気づきや学びになれば幸いである。

最新情報はスタンドエフエムで投稿している。

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それではまた次回のコラムでお会いしましょう。