COLUMN コラム
【業務効率向上の鍵】人材不足の迷宮から抜け出す「省人化」戦略
日本企業、とりわけ中小企業が今、最も頭を悩ませている課題・問題は何だろうか?
多くの課題があるだろうが、その内の1つに「人材不足」があることは間違いない。
少子高齢化は止まることを知らず、労働人口は減少の一途をたどっている。
加えて、採用市場は完全に「売り手市場」であり、優秀な人材を獲得するための採用コストは高騰する一方である。
ここについては、「採用活動はもう時代遅れ」というコラムを書いたので、現状をより詳細に知りたい方は既出のコラムを参考にしていただきたい。
だが、これまでと同じように人が辞めたら「はい、採用!」みたいな感じで常に採用活動を続けていかないといけないのだろうか?
辛くないか?
苦しくないか?
業務もあるのに、採用活動もやる必要がある。
全然集まらない応募者にガッカリして、心が痛まないか?
本当にこのままでいいのだろうか?
私たちが今、真剣に考えるべきは、そもそも「採用活動をしなくても強い会社」を作る方法はないのか?という根本的な問いである。
もし組織を強化するためには、業務をこなすためには、スケールをあげるためには、「採用」が絶対に必要!と思っていたことが、間違ったら?
常に新しい人材を追い求める消耗戦から抜け出し、少数精鋭で圧倒的な成果を出すことができるのではないか?
今回のコラムでは、その具体的かつ本質的な方法について掘り下げていきたい。
なぜ会社は採用を続けないといけないのか?
多くの企業が今も採用課題に苦しんでいる。
終わりなき苦しみの連鎖に疲弊している。
その原因は根深く、複合的である。
大きく見ると、4つの課題があるように思う。
1つ目の理由は、人材の利殖である。
これまで一緒に戦ってきた人材が辞めてしまうことがある。
「何で今?」というタイミングで人は何故か辞める。
退職という大きなイベントは、残された社員の業務負担を増やしてしまい、更なる離職を誘発しかねない。
そのため、企業としては即座に代替要員を見つけ出したい気持ちに駆り立てられてしまうのだ。
2つ目は、生産性の低さだ。
いくらAIだ、DXだ、ITだと言っても、使う人がポンコツだと、全く無意味だ。
一人ひとりの業務効率が低いと、成果を出すために多くの人員を投入せざるを得ない。
「1人でできると思っていたが、5人必要」といったことは日常茶飯事だ。
昔ながらのアナログ業務や非効率な業務プロセス、IT化の遅れなどが、結果として「人が不足している」という錯覚を生み出している。
3つ目は、属人化である。
多くの中小企業で課題になっている属人化は、採用を必要だと思わせる要因の1つだ。
「あの人にしかできない」という仕事が多すぎる組織は、その人が辞めた瞬間に業務がストップしてしまう。
その穴を埋めるためには何が必要だろうか?
人海戦術で埋めるしかない。
すると、他の業務が圧迫されて業務負荷が高くなる。
そのために、採用を急いでしまうのだ。
業務がブラックボックス化し、知識やノウハウを共有していないことで組織全体の生産性も向上しないリスクがあると知るべきだ。
4つ目は、教育不足だ。
これは意外に思うかもしれない。
だが、冷静に考えてみれば、納得できる項目だ。
新しく入った人材がなかなか戦力にならない。
既存社員も新しいスキルや知識を習得する時間がない。
AI時代の幕開けと言われている昨今で、IT化すらできていない。
これでは、個人の成長が止まってしまう。
個人の成長がない組織は結果として組織全体の能力向上もない。
「人が育たないから、また採用」という悪循環に陥ってしまうのだ。
以上のように
- 人材の利殖
- 生産性の低さ
- 属人化
- 教育不足
の4つこそが、多くの企業を「採用依存体質」へと陥らせている根本的な原因なのだ。
この負の連鎖を断ち切らなければ、いつまで経っても採用の泥沼から抜け出すことができない。
悪循環からの脱却
「採用依存体質」という泥沼から脱却するためには、何をどうすればよいだろうか?
その方法が「省人化」である。
「人を省く」と書くので、リストラと思ってしまう人もいるかもしれないが、そういうことではない。
業務にかかる人を減らす取り組みのことである。
他の言い方をすれば、効率化・自動化・省力化といったワードになるだろう。
この省人化こそが中小企業に必要なものである。
省人化の本質とは、業務プロセスを最適化し、一人ひとりの生産性を向上させ、結果として「採用しなくてもこれまで以上の成果を出す」ことである。
少し分かりにくいので、簡単にすると、
- 今の業務プロセスを見直し
- 一番いい方法が何かを再検討し
- 最も生産性の高い業務プロセスを実行するための方法を設計し直すことで
- 採用しなくても大丈夫な状況を作る
ということだ。
これを実現するために、BPOという手段やクラウドワーカーの活用も検討される。
だが、これらもまた人であるため、私は「人ありき」の体制から脱却すべきだ。
そこで、採用すべきはIT技術である。
ITを活用した業務プロセス改善
別に何かを導入しろと言っているわけではない。
何も導入しなくてよい。
ただ思い出して欲しい。
経費精算や日報作成、日報の集計、営業成績分析などなど。
こうした業務は必ず行う必要がある定型業務なのに、面倒くさい。
特に集計と分析はひどく時間がかかる。
ある会社は2人で10日かけて会社全体の分析を行っていた。
部署が多く、それぞれ分析すべき項目が違うためにソフトを使っての集計ができないという課題があった。
2人なので、実質この業務に1か月分の人件費がかかっていた。
もし1クリック10分で終わったら?
1か月分の人件費と時間が浮く。
これが省人化である。
浮いた時間を顧客との関係構築や新サービスの企画、営業のフォローなどより付加価値の高い業務に振り分けることができる。
会社のステージを上げるために何ができるだろう?
100人必要な業務が10人でよくなったら、90人も浮く。
90人いたら、なんでもできそうだ。
このように省人化とは「人を減らすこと」が目的ではなく、「人が本当にやるべき仕事」に集中できる環境を作り出すための先着的な取り組みと言えるのだ。
最後に
今回のコラムはどうだっただろうか。
読者の皆様にとって、今回のコラムが何か気づきや学びになれば幸いである。
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それでは、また次回のコラムでお会いしよう。