COLUMN コラム

2025.08.15
業務に忙殺されDXができない

業務に忙殺されDXができない

DX推進の実態調査に見る課題と誤解 - 業務多忙による人材育成の遅れは本当か。IT化とDXの混同、満足度調査の 曖昧さなど、最新の意識調査結果を検証します。

とある記事を見つけた。

業務に忙殺されデジタル人材が育たない DX意識調査で見えた日本の課題

 

PwCコンサルティング社が「DX意識調査-ITモダナイゼーション編-」の調査結果を発表したのだが、その内容を3ページにわたり詳細に伝えている記事である。

この記事では「デジタル人材」、つまりはDXを推進するための人材を育成する時間がないことが分かったとする記事である。

この記事を読んだ上での私の見解を書いて残しておきたいと思い、今回コラムとして書くことにした。

ちゃんと数字を見て判断しよう

よく記事で見るDXは業務効率の向上や生産性の向上を謳っている。

そうすると、業務に忙殺されデジタル人材が育たない、とは矛盾しているように思う。

「業務効率を上げるためにDXをしたいが、重要なデジタル人材が育たないからDXを行って業務効率を上げることができない」ということだろうか。

もしそうなら、一生できない気しかしない。

では、アンケートの結果を見てみよう。

 

忙しくて業務に追われて育成に時間を割くことができない、と答えたのは実に20%だ。

100社中の20社だ。

残りの80社は教育に時間を割くことができると回答している。

タイトル詐欺の気配がする。

 

次に自動化にあたっての社内の障壁についての調査も業務に追われてできないと答えたのは、17%だ。

できてるやん、と思う。

別に80%は業務に追われることなく自動化できてるやん。

もちろん、他の項目もあるので簡単に言いきれないが、タイトル詐欺は確実だ。

もう少し別のタイトルはなかったのかなって思う。

 

とはいえ、日本は人材投資をしない国なので、時間があろうが金があろうがデジタル人材を育てるための投資活動は行っていないだろうと私は予想している。

 

DXの満足度調査はすごく曖昧

画像5枚目にDXの満足度について調査がある。

先進96%

準先進51%

その他19%

という風に早くDXを取り組んだ企業ほど満足度が高いという調査報告だ。

すごい!

DXを早くしなきゃ!

ってなるだろう。

だが、ここでも思う。

それぞれの分母はいくつなのか、不明なのだ。

全体の分母は500であることが分かる。

だが、3つに分けた時のそれぞれの分母が不明だ。

また、資産力による違いも不明なため、これをこのまま受け取るのも恐ろしい。

もしかしたら何兆円規模の会社が先進に多くいるから満足度が高いかもしれない。

他にも要素は複雑に絡んでいるだろう。

そして、一番気になるのは「期待以上」と答えた企業の成果である。

DXとは生産性の向上や業務効率の向上ではない。

それはIT化だ。

IT化は量的変革で、DX化は質的変革である。

生産性の向上や業務効率の向上を指し示しているのなら、それはただのIT化だ。

そして、残念なことにこうしたアンケートで調子が良いのはIT化であることが多い。

恐らくだが、ここで期待通りと応えている企業はIT化のことを答えているのではないだろうかと邪推してしまう。

それくらい日本のDX化はIT化のことを指し示しているのだ。

なぜここでアジャイル?

アジャイル開発はシステム開発を行う上での開発手法の1つだ。

DXの文脈で出てくるとは思えないのだが、なぜここにアジャイル開発が出てくるのか謎だ。

トライ&エラーでリサーチとデータ分析を行って事業に新しい価値を付けて顧客体験をよりよいものにしていくことを示しているなら、わざわざアジャイル開発と言わないだろう。

IT部門と連携することも書かないだろう。

なぜここでアジャイル?と思わざるを得ない。

 

また、内製化を実現しているとしているが、これもまた資金のある企業であればあるほど可能だ。

逆に言えば資金力のない企業の方が多く、そのため、国は外部の専門組織を活用してDXを取り組んでいくことを推奨している。

なぜオススメの手法と反対のことをやっているのに、まるで素晴らしいみたいなことになっているのか謎だ。

最後に

興味があったので一読させていただいた。

だが、DXの指標となるようなレポートだったのかどうか、という視点で見るとなかなか難しい。

そもそもタイトル詐欺だし、急にアジャイルの話が出てきても困るし、たぶん期待通りと応えた人はITをDXと勘違いしているだろう。

ちゃんと言葉の定義をした上でアンケートを取る方が有効だろう。

そもそもDXをやれていると答えるからには、何かしら組織や事業、商品やサービスなどを変革し顧客体験価値の向上を図ることができたのかという視点が必要だ。

単純に「効率化が上がった、わーい」はただのIT化である。

この点をしかと確かめながらアンケートを取られることをオススメする。

 

今回のコラムはここまで。

このコラムが何か気づきや学びになれば幸いである。

それでは、また次のコラムでお会いしましょう。

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