COLUMN コラム

2025.07.16
現場の声を吸い上げていない経営者ほど、DXを語りたがる

現場の声を吸い上げていない経営者ほど、DXを語りたがる

経営者の間で広がる「DXに取り組んでいます」という声。しかし、実態は単なるITツール導入に留まる"なんちゃってDX"が横行しています。本来のDXとは何か、成功への鍵を解説します。

最近、やたらと「DXに取り組んでます」と自慢する経営者が増えてきたように感じる。

自社の取り組みとしては華々しい成果を掲げているが、蓋を開けてみると、どうにもその実態は“なんちゃってDX”ばかりだ。

たとえばこんなもの。

  • タスク管理サービスを導入しました
  • ノーコードツールを使いはじめました
  • AIチャットボットを導入しました

確かに見た目には「DXっぽい」。

ITに詳しくない人からすれば、「柔軟な取り組みをしている先進的な企業だな」と見えるかもしれない。

でもそれ、あくまで“風”でしかない。

厳密に言うと、それは「ただのIT化」である。

「DXって何?」と聞くと、誰も答えられない

私は、こうした“なんちゃってDX”を誇る経営者に共通するポイントを発見した。

それは、そもそもDXが何かを知らないということだ。

DXは、ITツールを導入するだけで終わる話ではない。

単なる運用のことでもない。

本来のDXとは

デジタル技術を活用して現場業務を根本から見直し、再設計し、顧客に新しい体験価値を提供する取り組みのこと。

である。

つまり、IT導入は単なる“手段”であって、重要なのはそれを使って何を実現できるのかという“目的”の部分。

だが多くの企業では、外部ベンダーやIT/DXコンサル、中小企業診断士の言葉だけを鵜呑みにして、現場の実態も課題も把握せずにツールを導入してしまう。

“流行りに乗ってる感”を出したいがために、安易に飛びついてしまうのだ。

なんちゃってDXの原因は「見栄」と「思いやりのなさ」

では、なぜこうした事態が起きるのか?

理由は大きく2つある。

1. 見栄を張りたい

「うちもAI入れました!」

「ノーコードで業務改善してます!」

など、聞こえの良い言葉でアピールしたい経営者が多い。

本当は中身が追いついていないのに、「最先端のことやってる感」を出したいのだ。

とくに最近のAIブームに乗って、よく分からないけど「とりあえずAI入れとけ」みたいなノリの経営者も多い。

「分からないけど導入すれば楽になるんでしょ?」

そう思ってる時点で、もうDXじゃない。

2. 現場を見ていない(もしくは無関心)

もう一つは、現場を大切にしていないという根本的な問題。

「社員は家族だ」と語る経営者に限って、現場の声を聞かずに勝手にツールを導入する。

これと似たようなことが日常生活でもある。

そう、家族に相談もせずに高級車を買ってくるのと同じことだ。

私は怖くてできないが、それを平然とやってしまうのが“家族思い”の経営者だったりする。

導入前にやるべきこと、それは「ヒアリング」

ITツールを導入する前に、絶対にやらなきゃいけないことがある。

それが徹底した現場ヒアリングだ。

具体的には以下のようなことを聞き出したい。

  • 現在の業務フローを把握
  • 工程ごとの必要時間と人数
  • 省略可能な作業の特定
  • 属人化している工程の洗い出し
  • ボトルネックの特定とその要因分析

これをやらずにツールを導入するのは、5年以上会っていない親戚に洋服を買うようなもの。

せめてサイズや好みを聞いたり、一緒に買いに行くのが普通だろう。

ヒアリングなしのIT導入は、失敗の確率を爆上げしているようなものだ。

しかも、そのヒアリングすら他人任せ、外注の“IT部門”に丸投げだったりすると、もう目も当てられない。

ヒアリングの精度は「安心感」で決まる

注意点がもう一つ。

ヒアリングをしても、現場が正直に答えるとは限らないということ。

人は平気で嘘をつく。

「5時間かかる作業を2時間で終わる」と言うのは、よくある話だ。

なぜか?

  • 自分の評価が下がるのが怖い
  • サボってると思われたくない
  • 他の人より時間がかかってるのがバレたくない

これを防ぐために必要なのは「心理的安全性」である。

つまり、安心して正直に話せる空気をつくること。

経営者が「社員は家族」と本気で思っているなら、こういう土台は作れるはずだ。

「DXやってます!」は自己満で終わってないか?

社員が正直に言えない環境だと、導入後にも影響が出る。

現場は「これ使いづらい」と思ってても、経営者には何も言えない。

なぜなら、

  • 文句を言えば評価が下がるかもしれない
  • 社長が決めたことに異を唱えるのは怖い

だから仕方なく使っているだけかもしれないのに、社長は「何も言われないってことは成功したな!」と勘違いする。

この“勘違いDX”こそが、組織崩壊の第一歩になりかねない。

成功するための準備は、地味だけど超重要

ITツールを導入する前に、やるべき準備は以下の通りだ。

  • 現場とのコミュニケーションを徹底すること
  • 心理的安全性をつくること
  • 導入後も現場からフィードバックを得られる仕組みを整えること

導入して終わり、ではない。
むしろ、導入してからが本番なのだ。

最後に

今回のコラム、どうだっただろうか?

DXは素晴らしい取り組みだ。
会社を成長させたいという経営者の思いも、心から応援したい。

でも、現場のことを見ずに「なんちゃってDX」を自慢していないか?

一度立ち止まって、振り返ってみてほしい。

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