COLUMN コラム
最近、「生成AIを使って業務効率化をしましょう!」といった言葉をよく聞く。
どういうことかと思ってクリックしてみると、セミナーに誘導される。
そこで語られた内容がどうも疑問しかなかったので、今回はその内容を題材にしてコラムを書こうと思う。
その内容とは、「生成AIで業務効率化は実現できるのか?」ということである。
このコラムをお読みいただくことで、こうした悪質なセミナーに引っかからなくなるだろう。
では、どういうことか1つ1つ説明していこう。
業務効率が上がるとは?
まず業務効率が上がることから見ていこう。
日立ソリューションズの定義を見てみよう。
業務効率化とは-業務効率化におすすめのツールや手順・ポイントをご紹介!個人向けの内容も解説!-には、このように定義されている。
業務効率化とは、業務を進行していくうえで無駄となる業務を減らし、全体の生産性を高める取り組みのことを指します。業務効率化に取り組むとことで工数や業務時間を最適化でき、注力すべき業務に時間を費やせるようになります。そうすることで、自然に利益の向上が図れるようになり、企業にとって大きなメリットをもたらします。
業務効率化の具体的な取り組み内容は、業務のプロセスに隠れた「ムリ・ムダ・ムラ」を排除して改善を続けることです。
「ムリ・ムダ・ムラ」の詳細は以下の通りです。
- ムリ:業務やスケジュール面で負担が大きくなること
- ムダ:人材や時間を必要以上に活用すること
- ムラ:業務のクオリティが一定ではなく予測ができないこと
生産性向上についても定義されていたので、併せて紹介したい。
業務効率化と一緒に使われる言葉に「生産性向上」があります。生産性向上とは資源を最大限に有効活用し、最小限の投資で最大の成果を生み出すことです。
つまり、業務効率化は生産性を向上するための「手段」の一つということです。生産性向上は「成果」に重きを置いた言葉で、利益に関係する会議などで使われることが多いです。もし、業務効率化と生産性向上の違いが分からなくなった場合は、「生産性を高める為」に「業務効率化を図る」という関係性を覚えておきましょう。
私の定義では
- 誰でも
- いつでも
- 何度でも
- 同じ成果を得ること
としている。
言い方が違うだけで、言いたいことは日立ソリューションズ社と同じである。
1:今日入社した人でも10年目の人でも
2:朝やっても昼やっても夜やっても
3:1回目でも2回目でも3回目でも
4:同じ結果を手に入れることができる
という状況を作るのが業務効率化なのだ。
1回の作業に負担が多ければ何度もできませんし、誰でもできない。
誰でもできるということは、それだけ業務プロセスが簡素化されていることを意味する。
何度もできるということは、業務を終える時間を短縮化し挑戦しやすい環境にあることを意味する。
何度やっても同じ成果が手に入る、ということはビューマンエラーが発生せずに、確実に正しい結果をもたらすことを意味する。
そして、こうした環境にあるということは、振り返りもしやすいことを意味している。
もっと効果的に業務を進めるためには、何をどうすればよいかを見つめ直しやすいということだ。
このような状態が業務効率化と言えるのだ。
効率化は生活にも
概念的な話を長々としてしまった。
たとえば工場を想像してみよう。
私はプッチンプリンが好きだ。
プッチンプリンの工場に行ったことがないのですが、1年目の人と10年目の人で作業効率性に大きな違いはないはずである。
もしあるなら、プッチンプリンは手作業で作られているということになる。
でも、おそらくプッチンプリンは工場で機械的に作られているはずだ。
そうなると、経歴が何年だろうが正直効率性に違いが発生するのか疑問である。
もちろん、長くなればなるほど様々な経験ができるので、いろんなことに対処できるようになるだろう。
しかし、効率性という点だけで見ると、大した違いがあるように思えない。
これが業務効率化の極みなのだ。
といっても、なかなか想像しにくいだろう。
そこで、自動車を事例に考えてみよう。
自動車は基本的に免許を取得すれば乗ることができる。
自動車は移動を効率化した。
徒歩で30分の距離も自動車であれば5分くらいで着くだろう。
このように圧倒的な移動速度を私たちは手に入れた。
さて、ここで問題だ。
自動車は特殊な技能や技術、知識を必要とするだろうか?
ルールや車を扱う最低限の知識さえあれば、正直誰でも乗ることができる。
誰でも、いつでも、何回やっても、徒歩30分の距離を5分で行ける。
カーナビもこれと同じだ。
少し操作を覚えるだけで、誰でもいつでも何回やっても自分の行きたいところに、ナビを合わせることができる。
このように私たちの生活に効率化は見え隠れしているのだ。
生成AIは業務効率化を実現できる?
では、生成AIはどうだろうか?
誰でもマーケティングができるだろうか?
誰でもエンジニアのように開発ができるだろうか?
誰でも文章を書くことができるだろうか?
正直言うと、ムリだ。
前提知識が必要だ。
私はエンジニアである。
エンジニアではない人が私と同じようにAIを使って、同じような効率性を発揮することは絶対に不可能だ。
これと同じくマーケティングを専門にやっている人と同じように生成AIを使ったからと言って、その人のようにマーケティングができるわけではないのです。
それだけではなく、生成AIを扱う人の技量によって生成AIの回答も変わる。
生成AIをちゃんと使える人とそうではない人の間には、越えがたい差があるのだ。
さらに聞く度に回答が変わる。
この経験をしたことがある人は多いだろう。
同じ質問なのに、全く違う回答が来ることもある。
時には嘘の情報を出してくることもあり、しっかり情報の精査も必要だ。
では、その情報の精査は誰がやるのか?
そう、私たち人間である。
ということは、私たち人間側にある程度の知識や技術、技能を前提としているということになるのだ。
この時点で
- 誰でも
- いつでも
- 何度でも
- 同じ成果を得ること
を達成できていないことが分かる。
よって、生成AIで業務効率化を実現することは、絶対に不可能であると断定することができる。
もちろん、業務効率化の定義を変えてしまうと、実現できるだろう。
しかし、日立ソリューションズ社の定義でも、生成AIによる業務効率化は実現できない。
そのため、よっぽど誤った定義をしないと無茶な話だ。
生成AIがもたらすのは?
となると、生成AIは何をもたらすのか?
それは「生産性の向上」である。
専門的な知識・技能を持っている人のパートナーとして、その人の生産性を底上げする。
それが生成AIなのだ。
専門家だからこそ生成AIが出してきた回答をすぐにチェックすることができる。
だから、すぐに判断もできるし、生成AIを使って質問する時も的確に投げかけることもできる。
マーケティングを専門でやっている人とそうではない人とで、生成AIに質問する内容が違うのは当たり前なのだ。
生成AIを活用するにも前提知識が必要である。
この現実から目を背けて安易に「効率化ができる」と謳う業者はなんと悪質か。
なんとも嘆かわしい。
このコラムを読んでいただいたからには、ぜひ引っかからないでいただきたい。
最後に
今回のコラムはどうだっただろうか。
生成AI関連の業者は、本当に悪質なものが多い。
よく名前を聞く業者であっても、有名企業のコンサルに入っている業者であっても、本当に大丈夫かどうかは不透明である。
私が参加したセミナーを主催していたのは、超有名企業にAIコンサルとして入っている業者だった。
そのような業者はAGIをまるでドラえもんか鉄腕アトムかのように言い放っているのを見る様は、下手なお笑いを見るよりも面白かった。
それくらいAI関連は「なんちゃって」が多いのだ。
ぜひ気を付けていただきたい。
さて、今回のコラムが何か気づきや学びになれば幸いである。
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それではまた次回のコラムでお会いしましょう。