COLUMN コラム
2024年12月12日付の日経新聞で「富士フィルム、生成AIで人員配置計画 年8000時間削減」というコラムが掲載された。
最新の取り組みで素晴らしい試みである。
だが、このタイトルは少し過剰である。
内容を拝読すると、富士フィルムが所有するコールセンターで運用しているシステムをAIに置き換えたことで、コールセンターに必要な人員をすぐに判断できるようにするAIシステムを導入した、というものだ。
単純に生成AIで業務が減って、富士フィルム内の人員配置計画が実行される予定であるというわけではない。
ITに関する記事はこのようなミスリードが起きてしまいがちなので、十分に留意が必要だ。
では、この8000時間の削減はすごいのだろうか?
なんだかすごそうに感じるが、果たして本当にすごいのか?
この部分を見ていきたい。
意外に簡単に削減できる時間数である
「生成AIで」という条件を付けるとすごいのかもしれない。
しかし、この条件がなければ大した削減時間数ではない。
たとえば請求書発行業務に2名で5日かかっていた業務があった。
つまり、10日間なので、毎月80時間も請求書発行業務を行っていたことになる。
これをたった10分に減らしたことがある。
2人必要な業務が1人で10分でできるようになったので、年間120分だ。
前は年間960時間だったのが、120分になったわけだ。
たった1つの業務だけでもこのインパクトである。
他にも人事コンサル会社がサービス提供時に行っていたデータ整理業務があるが、これは少なくても3日かかっていたそうだ。
この業務を30分に減らすツールを開発したことがある。
しかも、この30分は自動で動くので、その間は別の仕事に着手することができる。
このツールのおかげで受注件数が2倍になったと喜んでいただいた。
この事例だと、1回の提供につき3時間で月4回のサービス提供を行っていたので、
(3日×8時間)×4回=96時間
という計算になる。
年間にすると、1152時間だ。
これが実質0時間(データ整理が終わるまでは毎回30分)になったわけだ。
このように業務を上記のように短縮できれば、8000時間の削減を実現できる。
コールセンターに限って言うと、
- 上長に提出する報告書作成ツール
- 顧客に送るメール作成ツール
- 顧客から回収した問い合わせの自動振り分けツール
- シフト作成ツール
- 人員予測ツール
- 架電ツール
などを開発したことがある。
手前味噌で恐縮だが、これらのツールはかなりよくできている。
毎日3時間以上の残業が常だったマネージャーが定時退社できるようになったし、業績も向上したと喜んでいただいた。
顧客に送るメールの品質も統一できるようになったので、顧客満足度も向上したらしい。
生成AIはまず効率化を終えてから
企業の抱えている業務は本当に無駄が多い。
すごく多い。
気付いていないだけである。
日常化してしまったため、簡単にできるのだと分かっていない。
事例をご紹介したが、頑張ってやっている業務の大半は数クリックで終わることがある。
電子帳簿保存法対応で毎日4時間以上も手作業でアップロードしていた企業があった。
それが自動アップロードをするツールを導入したことで、ランチ前に対応すればランチ後には業務が終わっているということもできる。
徹底した効率化を行うことで人材を大事にできる。
人材配置なんて簡単だ。
人手が足りないから事業拡大できないと悩む前に、効率化できないか?と検討した方がよいだろう。
そうすると、AIが頭によぎる。
しかし、効率化は本当に多くの手段がある。
今生成AIが流行だからAIを使いたい気持ちは分かる。
AIを使っていると言うと、流行に乗れている感じがする。
上場企業だと株主にもアピールになるだろう。
あえて言おう。
AIは全てを解決できない。
AIは万能ではないのだ。
だからこそ、みなさんには流行に乗ることだけを考えず、まずは基礎を固めてからAIを使ってみることをオススメしたい。