COLUMN コラム
「生成AIを導入すれば、仕事が劇的に楽になる」
巷ではそんな声が飛び交っている。
しかし、本当にそうなるかは、あなたの使い方次第である。
本稿では、効率化の本質を問い直したうえで、生成AI時代にこそ必要な覚悟と思考を語りたい。
「早くなる=効率化」ではない
まず、言葉の定義を揃えたい。
効率化とは、「誰がやっても・いつでも・何度でも、同じ品質で同じ結果が出るように仕組み化すること」だ。
「この方法なら誰でも5分」が効率化である。
つまり、「俺なら5分」は効率化ではない。
属人芸を磨くのは自由だが、組織にとっての価値は薄い。
むしろリスクだ。
その人がいなくなった瞬間、業務が遅くなってしまっては意味がないのだ。
新人でもプロでも関係なく、同じ品質の結果を得ることができるようになるのが大事なのだ。
このように言うと、
「うちの業務は特殊だから仕組み化できない」
ということを耳にする。
何度聞いたか分からないくらいよく耳にする。
だが、そういった業務を1つ1つ分解していくと、必ず仕組み化することができるのだ。
特別なのは業務ではなく、無駄と属人なのだ。
「愚痴」を設計図に変える
よく勘違いしてしまうのは、ITツールやDXサービスの導入である。
これをやっても失敗しか未来がない。
では、どこから手をつけるか。
一番簡単なのは、愚痴の可視化である。
私はこれを「自分専用ドラえもんメソッド」と呼んでいる。
日常の作業に向かって、遠慮なく愚痴をぶつけよう。
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この確認、なぜ毎回二重なんだ?
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そのファイル名、誰にも分からないだろう?
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同じ文言を毎回写経させる意味は?
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会議体が多すぎないか?決まる場所はどこだ?
愚痴は設計図の原石だ。
なぜ存在するのか/誰のためか/どこにリスクがあるかを問い直すと、「捨てる」「まとめる」「自動化する」の選択肢が見えてくる。
この質問が効率化の種になるのだ。
人は、現状維持バイアスが強い。
昨日と同じ生活をしたいと考えてしまうのだ。
だからこそ、ドラえもんに業務の不満や不安、不足などを言ってみることで、どこに問題があるか分かるようになるのだ。
「コスト」ではなく「損失」で考える
効率化投資を渋る判断は多い。
だが、本当に怖いのは機会損失だ。
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10日かけていた月次処理が10分になると、年間120日→2時間。
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時給換算の人件費が下がる
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処理しないことが脳を休ませる
人は毎日判断している。
その判断の数を減らすことができるか。
より価値の高いことに回すことができるかがポイントである。
この点を一切無視する経営者が多い。
そういった経営者は
とにかくアナログで業務を回して、首が回らなくなったら人を採用したらいい
という風に考えている。
だが、それではコストがかかっていく一方である。
売上はそのままで、利益率は圧迫される。
これが健全な経営状態と言えるだろうか。
生成AI“万能説”の落とし穴
生成AIは強力だ。
生成AIで業務効率化といった広告をよく目にするし、そういった言葉に踊らされてセミナーに参加する人のなんと多いことか。
だが、生成AIは業務効率を上げるというよりも、生産性を向上させると言った方が適切だろう。
改めて業務効率化の定義を思い出そう。
生成AIを使えば、誰でも・いつでも・何度でも同じ結果が出るのか?
というものだ。
では、生成AIはどうか?
多くのケースでNOだ。
生成AIの出力が正しいか、効果的か、評価・補正するための前提知識が必要になる。
私はエンジニアだから、AIが吐いたコードの良し悪しを判定できる。
だが、前提のない人が同じレベルで裁けるかといえば難しい。
文章だって同じだ。
だから私はライティングを学び直している。
AIを活かすにも、人間側の筋力がいる。
結論として、生成AI=業務効率化ではない。
少なくとも、「導入すれば誰でも同品質」という世界ではない。
定義をすり替える商法に気をつけるべきだ。
前提知識が必要で、その知識を持っているからこそ生成AIを活用することで、生産性の向上を実現できるのだ。
効率化は「目的」ではない
効率化は手段であって、目的ではない。
目的は価値の創出・品質の安定・時間の自由だ。
この目的を見失ってしまい、効率化を目的として効率化を図ってしまうのは本末転倒である。
何のために効率化が必要なのだろうか?
まずはこの目的意識から始めて欲しい。
その上で、ドラえもんに愚痴ってみよう。
不平不満がなくても10個愚痴を出してみよう。
そうすると、業務の非効率性や属人性が見えてくるはずだ。
何にでもAIというのは間違いである。
それはただの商法である。
詐欺に騙されることなく、しっかり何が必要であるかを見極めるためにも、効率化の種を見つけ出そう。
最後に
今回のコラムはどうだっただろうか。
読者の皆様にとって、今回のコラムが何か気づきや学びになれば幸いである。
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それでは、また次回のコラムでお会いしよう。