COLUMN コラム

2025.01.27
DXの正体が不明すぎる件について

DXの正体が不明すぎる件について

DXの本質は単なるIT化ではない。 ビッグデータを活用し、顧客価値を創造する経営変革とは? テスラとワークマンの成功事例から、中小企業のためのDX推進のヒントを解説。

DXって何だろう?

コロナ禍より見聞きすることが多くなった「DX」。

ディーエックスと読み、正式名称は「デジタル・トランスフォーメーション」のことである。

ついついデラックスと読みたくなるし、私の世代だと「ダブルエックス」と読みたくもなる。

「トランスフォーメーション」を英語で書くと「transformation」となる。

「DT」じゃんと思うかもしれないが、米国ではトランスフォーメーションの「trans」を「x」と省略することが多いため、「DX」と省略されるそうだ。

今回はこの「DX」について考察していきたい。

DX化はIT化の進化版?

一般の人に聞いてみると、DX化はIT化の進化系というイメージを持っている人が多いように思う。

「IT化のもっといいやつがDX化だから、これからはDX化を行っていきます。」という感じに思われているように思う。

ただのママチャリから電動アシスト付き自転車になったみたいな感じだろうか?

ところが、巷の情報を見たり聞いたりしていると、IT化の進化系なのか劣化版なのかよく分からない。

  • DXでデジタル化
  • DXで効率化
  • 生成AIを活用してDX
  • DXで物流革命
  • DX人材をリスキリングで確保しよう

前の3つはIT化の一部である印象があり、4つ目はITなのかDXなのかよく分からないし、5つ目に至っては何を言っているのか分からない。

もう何でもアリだし、何を言っているのかパッと見でよく分からない。

もう少し解説しよう。

デジタル化も効率化もIT化の一部であるので、DX化を頑張ってもIT化と同じ結果を得ることはできない。

生成AIもITの一部だが、これを活用することでDXをより簡単にしようということなら、文脈的には正しい。

だが、この文章だけで本当にそういう意味なのかどうかは不明だ。

「DXで物流革命」はキャッチコピーとしては正しいだろうが、事例として紹介される数々の記事を読むと全てIT化のことで、DXの事例はないのが現実である。

最後のリスキリングに至っては、確かに言われ始めているが、国が定めているDX人材は再教育で何とかなるレベルではない。

再教育をするくらいなら外から引っ張った方が早い。

リスキリングをするなら、ITリテラシーやAIリテラシーを高める方が効果的だ。

 

このようにIT化とDX化の違いがごちゃ混ぜ状態になっているのだ。

そして、これは専門家も同じで業務効率を向上させることがDXであると答えている人も多い。

 

さて、こんな状態なので、正直な話、お客さんに「御社にお願いするとDX化できますか?」という質問に困っている。

世間一般的な回答でいいなら、「お任せください」になる。

だが、正しく伝えるなら、「難しいです」という回答になる。

私はどちらを答えるべきか、いつも悩む。

それくらい世の中的なDXと本来的なDXが違うのだ。

どれくらい違うか、というとカレーとビーフシチュー、ウルトラマンと仮面ライダー、ガンダムとゲッターロボくらい違う。

ちなみに、DXができるか?の質問には「何をお求めですか?」とお聞きして、内容的にできそうなら「できる」と回答している。

DXの定義から考えてみる

さて、世の中的にかなり誤解されていることをご紹介した。

ここからはDXの定義や事例からDXを紐解いていきたい。

総務省が出している定義を見てみたい。

企業が外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること

引用元:

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd112210.html

 

デジタルガバナンス・コードによる定義だと以下のようになる。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

引用元:

https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc2.pdf

 

難しく書いてあるが、要は下記のようになると思う。

デジタル技術を活用してビッグデータを分析し、会社やビジネスモデル、事業やサービスなどを変革し、より高い価値を提供する取り組みのことと考えることができる。

デジタル技術を使うだけではなく、多くのビッグデータから顧客の感情や動向、社会の動きなどを察知し、顧客体験の向上を行うことができるよう企業努力を行うことである、とも言える。

これは何も商品だけではなく、カスタマーサポートや企業としての社会貢献性なども含む。

では、どういったことができるのか、というと事例として2つ挙げることができる。

事例1:テスラ

エネルギーの会社であるテスラは車の開発・販売を行っている。

テスラ車といえば、日本でも有名である。

実はテスラ車は大きなIoTである。

つまり、デジタル技術満載の車である。

購入した後もソフトウェアのアップデートができる車として知られている。

実はこのテスラ車で自動車保険のサービスが始まったのである。

ドライバーの運転レベルや事故の頻度など車の運転に関わるデータを蓄積して、ビッグデータを形成し、そのデータを元に各ドライバーに合った適切な保険料で自動車保険を提供する、というサービスである。

これこそDXと言える。

事例2:ワークマン

実はワークマン、Excelを使い倒す会社である。

土屋専務が陣頭指揮を執って、Excelを徹底活用する仕組みを取り入れたことで売上がV字回復したことで有名である。

ワークマンのすごいところは全社員がもれなくExcelを徹底的に活用できることである。

そんなワークマンはデータ経営をしている。

データを蓄積して徹底的に活用しているのだ。

  • 今どういう店にどんな商品が売れているのか
  • 自分の店の近くの店舗で何が売れているのか
  • 客層はどんな客層が多いか

など、様々な情報をデータ化し、店舗経営に活かしている。

Excelでも徹底活用すればDXができるというよい事例である。

中小企業はワークマンに続くべきである。

まとめ 改めて本来のDXを目指すべき

今回のコラムでは、DXについて見てきた。

世の中で言われているDXはいかにいい加減なものか分かった。

それでもDXというワードはなくならない。

それはDXの重要性が今後のビジネスにおいて非常に重要なポジションにあるからだ。

だが、ITを使えない人がDXを実行できるだろうか?

答えはNOである。

そもそもITリテラシーを必要とする。

だからこそ「デジタル技術の活用を前提」とするのだ。

 

今のDXは、DXコンサルやIT企業が利益を得るためだけの方便と成り下がっている。

同じ業界人として本当に恥ずかしい。

本来のDXは、ビッグデータを活用してお客様や社会によりよい価値を提供するための取り組みのことである。

テスラやワークマンの取り組みはよい事例だ。

よりよい価値を提供できるからお客様に喜んでもらえるし、選び続けてもらえるのだ。

特に中小企業は今一度、立ち止まって本当に仮初のDXが必要かどうかを判断していただきたい。

 

今回のコラムが何か気づきや学びになった方はシェアをしていただけると嬉しい。

また次回のコラムでお会いしましょう。

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