COLUMN コラム
ふと気になったことがある。
それはDXコンサルタントという職業のことである。
ITコンサルタントは理解できる。
IT技術の選定、導入や活用におけるコンサルティングをサービス提供するのが、ITコンサルタントの仕事である。
では、DXコンサルタントは一体何をコンサルティングするのだろうか?
そこで、今回のコラムではDXコンサルタントとは何者なのか?ということを見ていきたい。
どんな仕事内容か?
そもそもDXって何か?
そもそも論ではあるが、DXとはどのようなものを指すのか?
すごく簡単に説明すると、「デジタル技術とビッグデータを活用することを前提にし、会社の在り方、サービスなどを変革することによって、顧客に新しい体験価値を提供し、選んでいただける企業になる取り組みのこと」である。
このDXを行うことが非常に難しい。
成功している事例として考えられる企業はいくつかある。
たとえば
- アマゾン
- テスラ
- ワークマン
などである。
よくDX事例として挙がっているものの大半はIT化事例である。
デジタル技術を活用するだけでは足りない。
ビッグデータを活用するだけでは足りない。
あくまでも前提である。
その上で、変革を必要とする。
会社や社風、文化はもちろん、商品やサービス、提供方法、業務オペレーションなどを変革することで、いかにお客様に新しい体験価値を提供できるかがポイントである。
「業務フローをデジタル化しました」。
それで、お客様に新しい体験価値は提供できただろうか?
答えが「ノー」であれば、ただのIT化である。
効率が上がったから、お客様に使える時間が増えてきめ細かいサポートができるようになった。
これも「効率化」の影響なので、IT化である。
ビッグデータの活用がない。
デジタル技術を使うだけではなく、ビッグデータの活用もした上で、新しい価値を提供できるかどうかである。
たとえばテスラを事例に考えよう。
自動車に乗るドライバーのデータを収集し続けた。
その大量のデータから自動車保険を作った。
「こういう運転をする人だから、この価格」といった感じで一人ひとりに合わせた自動車保険を提供している。
今までテスラに乗るだけだったのが、専用の自動車保険を提供することで自分の運転に即した自動車保険に加入できる。
安全運転ができるテスラ愛好家にとっては非常に嬉しいサービスだろう。
これがDXである。
DXコンサルタントの仕事とは
では、事例は分かったとしても、自社に置き換えて取り組むことができるだろうか?
答えは「ノー」である。
事例だけ見てすぐに反映できるのであれば、今頃IT化をDX化と勘違いして事例として大々的にPRする企業は存在しないだろう。
ただのIT化でさえも難しく導入に失敗する企業が後を絶たない。
このような状態では、DX化は何とも途方のないプロジェクトのように思えてしまうだろう。
このような状態を打破するのが「DXコンサルタント」の仕事である。
私の考えるDXコンサルタントの仕事とは、
- ビッグデータの収集・分析・活用に関する助言及びサポート
- 事業計画の策定に関する助言及びサポート、またはその実行のフォロー
- 既存事業の見直しや強化に関する助言及びサポート、またはその実行のフォロー
- 営業・広告・マーケティングに関する助言及びサポート、またはその実行のフォロー
- 異業種・他業種の事例からの助言及びサポート
- 日本市場および世界市場における知見からの助言
という6項目になる。
デジタル技術の選定・導入・活用に関する助言やサポートは、ITコンサルの領分である。
DXコンサルでもサポート範囲内にしてもよいかもしれないが、明らかな線引きをしたいためにDXコンサルの範囲外としている。
1は当然のことなので、説明不要だろう。
2と3は、事業と商品の変革をもたらすことを期待するために必要な業務内容だ。
ここまでは問題ないだろう。
問題は4,5,6だ。
4は比較的に理解しやすい。
誰にも喜んでいただけないものを作って意味があるだろうか?
お客様に喜んでいただいてライバルよりも選んでいただけるようにしないといけない。
それがDXの真髄である。
ということは、営業やマーケティングに精通していない時点でアウトだ。
営業が苦手な人がお客様の気持ちを理解できるはずがない。
だからこそ、4は必要不可欠である。
ちなみに、広告もマーケティングも営業を強化するためのものであり、営業ができる人であれば理解できているだろうという考えで同列にしている。
5の異業種・他業種についてだが、他の業界について知らないのに何故DXができると言えようか。
たとえば飲食店専門DXコンサルタントがいたとする。
飲食店に強いことを謳いたいのは理解できる。
だが、それでは視野が狭く多種多様な選択肢がある中で、非常に限定されてしまう。
そのため、選択肢を多く持っていることが重要になる。
6はもはや当たり前である。
日本は世界経済の一部である。
日本市場はどんどん縮小していくことは目に見えている。
折角DXするならば、世界経済も視野に入れた取り組みを実施すべきである。
そうでなくても、世界市場の事例から日本にはまだ取り入れられていないサービスがあれば、それを輸入するだけで日本で流行するかもしれない。
このように日本市場だけではなく、世界市場もちゃんと視野に入れている必要があるのだ。
以上のようにDXコンサルタントと一口に言っても非常に大変な職務であることが理解できる。
だが、それほどにDXは難しいのだ。
他の記事ではどのように紹介しているか?
次に他の方が述べているDXコンサルタントについて見ていきたい。
DXコンサルとは?ITコンサルとの違いや業務内容・DXコンサルタント会社を選ぶポイントを紹介!
【2024年最新】DXコンサルとは|仕事内容や年収から紐解く将来性も解説!
これら3つの記事は共通している部分もあるが、全く共通していない部分もあって面白い。
上から見ていこう。
PASONAだと
- AI、IoT、クラウド環境など最新のデジタル技術の導入支援
- データ活用の推進
- デジタル戦略の策定
- 業務プロセスの再設計
- 組織の変革支援
としている。
どちらかというと、ITコンサルと業務改善コンサルをイメージさせる。
エグゼクティブリンクだと
- 新規ビジネスの戦略立案・実行支援
- マーケティング戦略立案・実行支援
- 既存システムの刷新支援
- デジタル化推進の人材育成支援
としている。
上2つは私も挙げた職務となり、3つ目はITコンサルの領分であり、4つ目は人材教育の領分となる。
4つ目については確かにDX化に必要な要素でもあるので、含まれても仕方ないと思える。
s-spice氏のブログによると
- ビジネスモデルの設計と分析
- デジタル戦略の立案
- 組織変革マネジメント
- データ分析と活用
- デジタルマーケティング
であるとしている。
この方の考えが3社の中で最も私の考えに近い。
何はともあれ共通するのは
- 新規事業の戦略立案や実行支援および分析
- 既存事業の戦略立案と実行支援および分析
- 組織変革支援
- データ分析と活用
の4つになりそうである。
どんな人にお願いしたいか?
ここまで見てきて、DXコンサルタントとは事業に関する助言やサポートを行う人であることが分かるだろう。
最後にもし私がDXコンサルタントにお願いするとしたら、どんな人にお願いするのか?という点について述べていきたい。
私が条件に入れるだろうことは3つである。
- 連続起業家であること
- 営業ができマーケティングについても精通していること
- 自社もDXをしっかり実践していること
これらが大前提である。
これらがない時点でお願いする価値がない。
何故か?
会社の運営をしたこともない人にビジネスがどうこう言われたくないのだ。
営業ができない人に顧客の心理を説得されたくないのだ。
自社のDXは全然やっていない人にDXの何たるかを説明されたくないのだ。
もしエベレストに登頂したいと思った時に、そこら辺にいる人にアドバイスを受けるだろうか?
それとも、マラソン選手に指導を受けるだろうか?
エベレストに挑戦したことがあって成功したことがある人で、指導した人の成功確率が高い人にお願いしないだろうか?
これと同じだ。
会社の経営もしたことがない人で、営業もできなくて、DXもしたことがない。
そんな形だけのDXコンサルタントに依頼すべきではないのだ。
ちなみに、連続起業家、というと会社をいくつも持っている人ではない。
シリアルアントレプレナー(連続起業家)とは、生涯にわたり、新規事業を次々と立ち上げるような起業家のことです。 最初に立ち上げた事業を継続しつつ、新たに事業を立ち上げたり、他社の事業を買収・相続したりしながら事業を多角化していく起業家はポートフォリオアントレプレナーといいます。
つまり、M&AなりIPOなりして一度会社をEXITして、改めて起業している人のことである。
この時、業種が全然違う企業を3社以上やっていると望ましい。
飲食店を3回やる、みたいなものだと他業種や異業種について理解度が低いので、判断基準とするには弱い。
このように私は考える。
DXコンサルタントと名乗る以上は、上記くらいは達成していただきたい。
チームでやる場合もあるだろう。
その場合はこの限りではないが、チームの中で役割分担をする以上は上記に当てはまる人材が必ず在籍していて、全員でフォローする体制が構築されていることが前提になる。
最後に
さて、今回のコラムはどうだっただろうか。
DXコンサルタントが非常に多くいるが、私はとても大変なお仕事だと思っている。
そして、その中にDXコンサルタントと名乗ってITコンサルをしている連中がいる。
本当に迷惑な連中である。
真剣にDXコンサルをされている方々の足を引っ張る行為だ。
是非読者の皆さんもこうした似非DXコンサルタントに騙されないように注意していただきたい。
今回のコラムが何か気づきや学びになれば幸いである。
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それではまた次回のコラムでお会いしましょう。