COLUMN コラム
IT専門家でも「〇〇化」を理解していない
IT専門家の中に「デジタル化はIT化とほぼ同じで、デジタル化の方が少し狭い意味くらいです」と説明しているのを目にしたり耳にしたりする機会があった。
あまりの衝撃に開いた口が塞がらない。
このような説明を聞くと、「そうなんだ」と思ってしまう方がいると思う。
本当に衝撃的である。
多くの「〇〇化」に困惑する人が続出
IT業界のワードを見ていくと、多くの「〇〇化」にぶち当たる。
タイトルだけで3つあるが、もっとある。
- DX化
- IT化
- システム化
- 効率化
- 自動化
- デジタル化
- 電子化
この他にもデジタイズ、デジタイゼーション、デジタライゼーションなどもある。
横文字にすると、もっと意味不明である。
横文字は別の機会に説明するとして、上の7つについて今回は簡単に説明しようと思う。
では、それぞれ見ていこう。
デジタル化と電子化について
まず似たワードとして、この2つを挙げることができる。
検索すると何とどちらも「デジタイズ」と出てくる。
だから、デジタル化と電子化は同じものであると捉えてよいと考えることができる。
が、私の認識では違いがあるので、説明する。
まず電子化とは、紙などアナログの媒体で記録したり入力したり保管したりしてきたものを電子媒体に変更することを指す。
肝心なのは、紙媒体を廃止してデジタルの世界でやり取りできるようにするということだ。
次にデジタル化とは、アナログで行っていた業務をITサービスを活用するなどしてデジタルの世界でやり取りできるようにすることを指す。
電子化は説明書をPDFに変更することを指すが、それをネットで見れるようにするとデジタル化と言える。
電子化したものを活用しているイメージだろうか。
たとえば契約書の締結を事例に考えてみよう。
電子化だと締結した紙の契約書をスキャンしてPDFにして保存すれば電子化と言える。
デジタル化だとITサービスを活用して電子締結を行うことがデジタル化と言える。
微妙に違いがあるが、電子化はデジタル化の中に含まれていて、範囲が狭いと考えれば分かりやすいかもしれない。
デジタル化の事例だと以下の通りになる。
- 紙で作られた説明書をPDF化してネットで見れるようにする
- 経費申請書を紙ではなくITサービスを活用して申請できるようにする
- 印鑑を電子に変更する
- 契約書を紙ではなく、ITサービスを活用して締結できるようにする
- 作業報告書を紙ではなくITサービスを活用して提出できるようにする
効率化と自動化について
次に似ているワードと言えば、この2つだ。
先ほどの電子化とデジタル化の説明時に、デジタル化が大カテゴリーで、その中に電子化が含まれていると説明した。
実は効率化と自動化もその関係性である。
効率化が大きく、自動化は効率化の1部である。
別だと言っている人もいるが、日本語は便利である。
文章にすると分かりやすい。
「自動化をしたことによって効率化を実現した」
と言うことはあっても
「効率化をしたことによって自動化を実現した」
と言うことはない。
自動化は効率を上げる手段に過ぎないのだ。
そして、効率化は様々な手法で実現可能である。
生成AIやRPAが有名だが、実は実務においてそこまで劇的な効率化を実現できない。
業務において最も効率化しないといけないのは、間接業務である。
9対1の割合で間接業務は存在すると言われている。
この比率が
もし5対5になったら?
もし3対7になったら?
もし1対9になったら?
どうだろうか?
これを実現するのが効率化の真骨頂である。
どこまで効率を上げることができるのか、という点で考えるべきなのである。
そして、自動化はその手段の1つに過ぎないのである。
システム化とは何か?
システム化とは、仕組み化のことであるが、IT業界においては基幹システムなどの開発・納品を指すことが多い。
正直、業務の棚卸をしていないし、仕組み化もしていない状態で基幹システムを作ったところで何も役に立たない。
お客様とお話させていただく中で、業務を把握されていない方が非常に多い。
無意識的に業務をやっているため、業務フローや注意点などを把握していない。
だからこそ、システム開発を行うのは失敗される方が多い。
IT化とは何か?
ここまで説明した〇〇化を総称して、IT化と言う。
デジタル化、電子化、自動化、効率化、システム化をまとめてIT化と言う。
つまり、ウルトラマン、仮面ライダー、ゴジラ、ガメラ、メタルヒーロー、スーパー戦隊などをまとめて「特撮」というのと同じである。
仮面ライダーは特撮ではあるものの、特撮は仮面ライダーではない。
これと同じく、デジタル化はIT化の一部ではあるものの、IT化はデジタル化ではない。
もう少し分かりやすく説明すると、ウルトラマンは確かに特撮の1つだが、特撮の全てではない、ということだ。
冒頭に戻るが、「デジタル化はIT化よりも少し狭い意味で、ほぼ同じ」と説明されていた専門家がいた。
「ウルトラマンと仮面ライダーは少し違うけど、ほぼ一緒」と言っているのと同じである。
暴論過ぎるのだ。
まとめ
今回はIT化に特化して「〇〇化」について説明した。
それぞれ全然違う意味や特徴があることを理解して、自分たちに合うものや必要なものは何かを判断する必要がある。
IT化とDX化の違いや横文字についての説明はしなかったので、また次回解説しようと思う。