COLUMN コラム
IT化はDX化の下位互換?
信じられないが、専門家でもIT化とDX化の違いを理解していない人がいる。
下位互換や劣化版と思っている人が多いのも、そうした背景があるからだと思う。
日本のDX化は誤解まみれで、コンサル会社や一部のITサービスを提供している企業などが儲かるための方便と化している。
DXに関係するガバナンスコードを見てみると、デジタル技術とビッグデータを前提にあらゆることを変革させることで、顧客の体験価値や社会貢献を向上させることだと認識している。
テスラがよい事例だ。
テスラはEV車を提供している。
そのEV車を提供するだけではなく、獲得したビッグデータを解析して最適な自動車保険の提供を始めた。
これがDXである。
こうした事例以外は全てIT化の域を出ていないのである。
つまり、日本のDX事例として紹介されるのは全てIT化なのだ。
IT化とDX化は全く違う。
カレーとチャーハンくらい違う。
少し分かりにくいかもしれないが、調理器具を準備して料理することがIT化で、お客さんの趣味趣向などのデータを集めてお客さんが食べたいメニューを開発して提供することがDX化である。
全然違うことが分かっていただけたのではないだろうか。
IT化とDX化の比較
これまで文面で説明してきたが、文章だと分かりにくいと思うので、図表として出したい。
DX化 | IT化 | |
前提 | IT化とビッグデータの準備 | 業務の仕組み化 |
期待する効果 | 顧客体験価値の向上や社会貢献 | 効率化、生産性の向上、属人化の解消 |
必要な人材 | 意思決定者(PM)、マーケター | パソコンが業務レベルで使える人 |
具体的な内容 | 会社や組織、ビジネスモデルなどの「変容」 | 業務の流れや内容の「変化」 |
DXが「デジタルトランスフォーメーション」の略字で、「トランスフォーメーション」のことを「変化」と捉えている人がいる。
しかし、「変化」ではない。
「変化」であるなら、「Change」であるべきだ。
「変容」であることが大事なのだ。
そして、トランスフォーメーションといえば、何を思い出すだろうか?
トランスフォーマーという映画を私は思い出す。
ビーストウォーズというアニメも好きだ。
これらに共通しているのは、劇的な変化である。
トランスフォーマーは、車や飛行機からロボットになる。
ビーストウォーズは、動物からロボットになる。
ゴリラがロボットになるのだ。
元が分からないくらいに変化することが「変容」と言えるのだ。
ビジネスにおいても元のビジネスと全く違うビジネスを始める、といったレベルがトランスフォーメーションと言える。
DX化は中小企業に必要か?
元あるビジネスの原型が分からないほど変化することをトランスフォーメーションと言うなら、中小企業にはとてもハードルが高いように聞こえる。
AmazonやGoogle、Meta、Sonyなど大企業にしかできないことに聞こえる。
であるならば、DXは不要だと思いたい。
すごく共感できる。
だが、世界基準で考えるならDXは待ったなしである。
劇的に変容するのは難しくとも、ビッグデータを活用して顧客体験価値を向上させる取り組みは可能である。
商品ライフサイクルも昔と違って、とても早い。
最近は3年と言われるほどだ。
そんな時、今までと同じビジネスでは難しくなっていく。
私たちがビジネスをやっていく上で、お客様に選んでいただく必要がある。
そのためにも、DXを行っていく必要があるのだ。
まとめ~IT化が先決~
日本のデジタルスキルは世界基準から遅れている。
IMDの調査結果ではデジタルスキルは63か国中62位で、ビッグデータの活用は最下位である。
こんな状態でDXは夢のまた夢である。
だからこそ、まずはデジタル技術の活用を行うべきなのだ。
とはいえ、パソコンが苦手という人がいかに多いか。
だからこそ、デジタル人材の育成を急ぐべきである。
ついついデジタル人材を外から採用することを考えてしまいがちだが、アナログ会社にデジタル人材が入社するとアナログ人材に変化してしまう。
まずは会社に所属する人たちをデジタル人材へ育成する投資をする必要がある。
急がば回れである。