COLUMN コラム
日本企業のIT化・DX化で最も期待されるのは“コスト削減”──
しかし、これが逆に投資の足かせになっているとしたら?
このような点に気が付いたのは、帝国データバンクや中小企業庁が発表しているデータを見ていた時のことだ。
「コスト削減」があまりにも日本企業のIT化やDX化に期待する効果として挙げられていた。
この「コスト削減」という現象が日本企業のIT化を推進できない理由になっているのではないかと思い至ったわけだ。
今回は日本企業のIT化を阻む考え方にメスを入れていこう。
目次
コストダウンを意識する弊害について
コスト削減は結果であって目的ではない
そもそもコストダウン自体は「悪」ではない。
IT化をしっかり行うことができれば、ありとあらゆるコストを低下させることができる。
- 時間的コスト:その作業を行う時間の削減効果(10時間が1時間になった、など)
- 人的コスト:1人当たりにかかっていたコスト
- 空間的コスト:物理的に占拠していた空間の削減効果(書庫が不要になった、など)
- その他のコスト:印刷代やインク代、封筒など他に発生するコスト
ざっと考えてもこうしたコストを低下させることができる。
よってIT化はコストダウンも可能だ。
だが、である。
コストダウンは副次的な効果に過ぎない。
コストダウンを目的としてIT化をしてしまうことは逆効果を生みかねないのだ。
ITサービスを入れるほどに膨れ上がるコスト
まずITサービスを導入すること自体は悪いことではない。
しかし、入れれば解決するわけではない。
たとえば、パソコンが分からない人が多い組織でクラウドERPを導入したとする。
研修や運用体制もゼロ。
見切り発車でGO。
さて、問題だ。
ちゃんと運用できなければ意味がないのだ。
このような事例は日本中を探せば、腐るほど出てくる。
にもかかわらず入れたら万事解決と思っている企業が多い。
そのせいで、コストダウンを目的として導入したITサービスによってキャッシュが圧迫されるという意味不明な現象が起きてしまうのだ。
ITコストを無理に抑えるのは悪手
ITサービスをどんどん入れることで発生する弊害を理解されている経営者もいる。
そういった経営者にありがちな特徴としては、コストでしか判断しないことである。
ITコストは安いほどよい、と考えているということだ。
ITサービスではなく、自前のシステムを開発する時、その費用をできる限り抑えたいと考える経営者がいる。
確かにIT系の費用は言ったもん勝ちみたいなところがある。
内訳はほぼ人件費だ。
これにサーバーなどの維持費とメンテナンス費が加わるくらいだ。
このエンジニア費用がべらぼうに高いし、高くもできる。
よって、出された見積もりが信じられず値切りたくなる気持ちも分かる。
だからこそ、値切っていく。
だが、待って欲しい。
安くすればするほど必要な機能が縮小されていくのだ。
無理に開発費を押さえた結果として、何も役に立たないシステムが手元に残るだけになりかねないのだ。
この事実を知っておくべきだ。
DXでもなぜかコストダウンを意識
DXとは、IT化の果てに実行できる取り組みである。
簡単に言うと、ビッグデータを活用し顧客が求めているものは何かを仮説検証し、実行していく中で、顧客に選ばれる企業になる取り組みである。
では、ここで問題だ。
コストダウンって何だ?
全く関係がない。
なぜIT化は理解できる。
IT化を行うことで、アナログ業務がデジタルで行うことができて、リソースを確保できるようになる。
その結果、ありとあらゆるコストを低下させることができる。
しかし、DX化は逆だ。
デジタルスキルやビッグデータを活用して、お客様に選ばれる企業になる取り組みなので、コストダウンなんて1ミリも入るはずがない。
ここに日本のDXの「いびつさ」が見え隠れする。
コスト削減を目指したプロジェクトはとん挫する
理論上の話を言うと、コストを削減だけに着目したプロジェクトは必ずとん挫する。
たとえば50%の削減を目指したとする。
その削減効果は大きいだろう。
しかし、そのプロジェクトを3回続けるとどうなるだろうか?
50%×50%×50%=12.5%
となる。
理論上、全く効果がなくなっていく。
やればやるほど削る部分がなくなっていくので、やるだけ無駄になっていく。
こんなところに貴重なリソース(キャッシュや労力、時間など)を投下させるのは、ビジネスの成長を低下させてしまいかねない。
場合によっては、停止してしまうリスクさえあるのだ。
目的意識をしっかりと持つことが大事
それでは、どのようにしてIT化をすればよいだろうか?
その答えは非常にシンプルだ。
「目的意識」を持つことが大事なのだ。
コストダウンも立派な目的だ、と言いたくなるのも分かるが、それだけならば別にIT化でなくてもいい。
外注してもいいはずだ。
IT化するということは、それ以外にもしっかり目標を定めて実行すべきである。
単なるコストダウンだけに留まらない。
たとえば
- 業務フローの見直しをして仕組みを整える
- アナログ業務をデジタルに置き換える
- 競争力を強化する
- 顧客満足度を向上させる
- 売上を上げる
- 情報の資産化を実行する
などなど様々な目的が考えられる。
こうした目的意識をしっかり持ち、実行することでIT化を成功に導くことができるのだ。
IT化は短期的な取り組みではない。
中長期にわたる取り組みである。
この中長期の視点こそがIT化の成功のカギであると心に刻んでいただきたい。
最後に
今回のコラムはどうだっただろうか。
今回のコラムが何か気づきや学びになれば幸いである。
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それではまた次回のコラムでお会いしましょう。