COLUMN コラム
時折出てくるこうしたニュース。
少し前はNHKが日本IBMを訴えた。
このこともコラムにしてあるので、是非一読して欲しい。
さて、今回はJAである。
詳しくは
【独自】JA全中がシステム開発失敗で200億円の損失!農協に負担要求で非難囂々…役員辞任、組織の改廃は必至
JA全中、新システムの使用停止 追加費用200億円規模の恐れ
という記事を参照していただきたい。
事実とそこから見る対策についてお伝えしようと思う。
記事から見る事象を確認
JA全中は業務管理システムを開発している。
その名も「新Compass-JAシステム」である。
会計、人事、給与、固定資産などの管理を行う業務システムだ。
この開発に失敗し、180億円から220億円の損失を出し、システムを使う農協などに負担増を求めていた。
なぜ負担増を求めたのかというと、当初予想していた運用費などが大幅に膨れ上がり年間20億円となると見込まれたのだ。
当初予想していた年間コストよりも2.8倍も高くなったことは、予想外だったようだ。
当初の予定では、約7億円の年間コストだったようだ。
月間にすると、毎月6000万円のコストだ。
かなり高額である。
少し異常な価格な気もするが、内訳が不明なので何とも言えない。
内容によっては妥当な可能性もあるが、個人的には抑えることができるとは思う。
とはいえ、当初の目論見である年間7億の予算が約3倍にまで膨れ上がることが分かったのは、予想していなかっただろう。
2024年1月より運用していたシステムであったが、あまりの高額な維持費にコストパフォーマンスが悪すぎると判断し、2025年2月にシステム運用を停止することが決まった。
25年度予算はすでに36億円の赤字となることが決まったようで、2月7日に開催された臨時株主総会にて山野会長からそのような発表があったようだ。
今後については、システムの停止時期は未定であるもののシステム以降は地域ごとによって検討するようだ。この移行作業にかかる予算はまだ未定であるが、最低でも180億円、長引けば220億円以上になる可能性があるだろうとしている。
システム開発は本当に難しい
JA全中がIT化に失敗した事例は今回だけではない。
2017年にも失敗し、10億円の損失を出したことがある。
このように失敗を繰り返しているのだ。
では、JA全中が愚かなのか?というと、そうではない。
システム開発は7割が失敗する、と言われている。
なので、基本失敗するのだ。
成功続きの企業は存在しない。
あのSonyでも失敗している。
PDCAを回しながら成功するまで継続してIT化を成功させて、DX事例として記事に掲載されている。
このようにシステム開発は本当に難しいのだ。
言葉を選ばずに言うと、日本人にシステム開発は無理である。
諦めた方がいいだろう。
だが、そうなるとコラムが終わってしまう。
身もふたもない。
そこで、ここからはシステム開発を成功に導くためにどうするべきかを3つのポイントで伝えていこうと思う。
業務を把握すること
自分の仕事を把握していない方が多い。
これは本当に多い。
業務内容や流れをヒアリングすることが多いのだが、ツールを使い始めてようやく「あ、こういうこともあった」みたいなことが起きる。
これは自分のことを知らないことが原因だ。
自分の体を知らないのに、オーダースーツを作ることなんてできない。
まずは業務全体を把握することが大事である。
これはシステム開発に関わらず絶対にやった方がいい。
仕組み化をすることによって誰でもできるようになる。
誰でもできるようになれば教育もしやすい。
教育がしやすいということは、誰かに依頼する時もスムーズであるということだ。
もしシステム開発をするなら、こういう状態を作り上げていると成功確率が格段に跳ね上がる。
ちなみに、この仕組み化を阻害する人がいる。
属人化した業務を好む人だ。
コロナ禍の時に特定の人しかできない業務があっただろう。
これは企業にとって致命的である。
棚卸をして誰でもできるようにしないといけない。
だが、属人化大好きマンはこの取り組みを拒否してくる。
自分しかできない業務を確保したい気持ちはわかるが、ビジネスマンとして無責任である。
自分の価値を証明する手段を失いたくない「無能」の証明である。
パソコンが使えるようになること
90年代はノートパソコン分野において日本はTOPだった。
プレイステーション2は軍事転用できるほどハイクオリティだったという。
ネジや加工の技術は世界トップレベルでNASAのロケットに使われるネジは日本製と聞いたこともある。
ロボット技術もすごいし、ネットインフラも世界トップレベルだ。
だが、使えないのだ。
分かるだろうか?
技術はすごい。
でも、すごい技術を使っているのは外国人。
日本人は鉛筆舐め舐め、電卓大好き、アナログマンなのだ。
いろんな人が「なぜ日本が落ちぶれたのか」を語っている。
国としての問題
企業としての問題
個人としての問題
など様々あるが、一番大きいのは「個人」であると思う。
パソコンが使えない人がなぜパソコンの依頼をするのか?
成功するはずがない。
家はカタログから選ぶことができる。
オーダースーツも形が決まっているので、選びやすい。
だが、システム開発はゼロからスタートである。
これは言わばファッションデザイナーに自分が着たい服を注文するのと同じである。
何でもできるファッションデザイナーと会話をするためには、こちらもある程度の知識が必要である。
つまり、土台が必要であるのだ。
「何か上はどーんって感じで、ズボンはバーンって感じで、色は海っぽい感じ」
こんな注文でイメージしたものが出来上がるだろうか?
失敗しかイメージできない。
たとえば海って言うと私のイメージは、何か色黒い青だ。
どちらかというと、恐怖の対象でもある。
このように人によって色や印象が違うだろう。
システム開発も同じようなもので、土台となる知識がないとプロと会話ができないのだ。
だからこそ失敗する。
であればこそ、パソコンを使うことができるレベルまでは最低限引き上げる必要がある。
企業としても人材投資をすべきであるし、従業員としても自己投資をすべきなのだ。
ヘアーカットと同じであると思うこと
とにかくシステム開発は後から修正ができるものだと思われがちだ。
だが、基本的に無理だと思って欲しい。
正確に言うと、できる。
だが、その分、考慮しないといけないことが増えたりゼロからスタートしないといけなくなったりする。
つまり工数が延びるのだ。
工数が延びるとどうなるか?
納期も延びるし人件費が増えるわけだ。
納期を変えたくないなら、エンジニアを増やすしかない。
そうすると、また純粋にコストが跳ね上がる。
1人追加するたびに100万くらいかかる。
10人追加したら1000万円だ。
そこまでして変更したいか?
もう一度胸に手を当てて考えよう。
システム開発はヘアーカットであると認識していただきたい。
男性はあまりピンと来ないかもしれない。
だが、一度切った髪はすぐには戻らない。
もし髪をバッサリ切った瞬間に、やっぱり止めたい!って言ったら、どうなるか?
もう戻れないのだ。
だからこそ、最初に述べた業務の棚卸が重要になる。
できる限り修正が発生しないようにしっかりと考えるからこそ失敗リスクを抑えることができる
最後に
正直に言うと、お金と時間さえ問題なければいくらでも修正を依頼していただいて大丈夫だ。
いくらでもご要望に応えることができる。
だが、たいていの場合、お金にも時間にも限界がある。
時間とは納期であり、お金とは予算である。
いつまでも完成しないバベルの塔をずっとお金を支払い続けることなんて無理である。
納期内に終わって予算内で終わるシステム開発をやり抜く方が双方ともにハッピーだろう。
だからこそ、依頼者側としての最低限の3つは準備したいところである。
もちろん、受注側にも責任がある。
受注側を探す方法はまた今度機会があれば語ろうと思うが、今回はこの辺で終わろうと思う。
最新情報はスタンドエフエムで配信しているので、そちらも是非チェックしていただきたい。
今回のコラムが何か気づきや学びになれば幸いである。
それでは、また次回のコラムでお会いしましょう。